会社を設立したばかりのとき、「資本金ってどう仕訳すればいいの?」「経費になるの?」「現金と預金、どっちを使えばいいの?」と戸惑う方は多いのではないでしょうか。
この記事では、会社設立時の「資本金の仕訳と勘定科目」について、税務・会計・法務の観点から、初心者にもわかりやすく解説します。
開業初日に必要な「資本金の仕訳」とは?
資本金の仕訳の基本ルール|現金で払い込んだ場合
会社設立にあたり、資本金を払い込む場面は最初に発生する重要な取引です。仕訳の基本はこうなります。
(借方)現金 ×××円 /(貸方)資本金 ×××円
ここでいう「現金」は、実際には銀行に振り込んだ金額を指す場合が多く、「通帳のコピー」がその証拠になります。

「資本金」という言葉に“お金を出す”というイメージを持つ人が多いけど、実は“会社の中にある元手”と考えるとわかりやすいです!
事例:設立時に親から100万円を借りて資本金に充てたケース
Aさんは親から100万円を借り、それを資本金として払い込みました。この場合、資本金としての仕訳は問題なくできますが、親からの借入は“会社の資金ではなくAさん個人の資金”なので、借入金として処理は不要。資本金はあくまでAさんが出資した形となります。
預金に払い込んだ場合の仕訳|「現金」との使い分け方
「現金」と「普通預金」の使い分けは、会計ソフトの勘定科目に合わせて以下のようにします。
(借方)普通預金 ×××円 /(貸方)資本金 ×××円
預金通帳に振り込まれているのであれば、”現金”ではなく”普通預金”を使いましょう。
事例:通帳に3回に分けて入金した場合
Bさんは設立資本金300万円を3回に分けて自己の銀行口座に振り込みました(100万+100万+100万)。この場合、仕訳はまとめて処理できますが、最終的な合計額が設立時点で揃っていることが重要です。
発起人が複数いる場合や現物出資の注意点
発起人が複数の場合は、それぞれの出資額に応じて仕訳を分けて記録する必要があります。また、現金ではなくパソコンや車などの”現物出資”を行った場合は、その評価額を”資本金”として処理します。
(借方)備品 200,000円 /(貸方)資本金 200,000円
このように、現物出資の評価には税務上・法務上の注意点があります。専門家への相談が無難です。
▶️事例:中古のノートパソコンを出資に使った場合
Cさんは20万円相当の中古ノートPCを会社の設立時に出資しました。帳簿上は備品として仕訳し、税務申告でも”現物出資”と記載。法人税の計算ではこの備品の耐用年数に応じて減価償却を行います。
仕訳日付はいつにする?登記日・払込日との関係
原則として、資本金の仕訳は”払込日”に行います。ただし、設立登記との整合性もあるため、帳簿上の記載タイミングには注意が必要です。



会計上は払込日、法務局には登記日。ズレがあるのが普通なので、両方を意識するのがコツです。
資本金の勘定科目を正しく選ぼう|現金・預金・資本準備金の違い
資本金はどこに記載される?純資産の部の基本理解
資本金は貸借対照表の「純資産の部」に記載されます。これは会社の元手であり、株主(発起人)からの出資金を意味します。
たとえば1人で100万円出資して会社を設立した場合、会社が使えるお金はその100万円。これが資本金です。
「現金」か「普通預金」か?払い込み方法で異なる勘定科目
実務では、銀行振込で払い込まれることがほとんどです。そのため、仕訳の”借方”は「普通預金」を使うのが自然です。
- 窓口で現金で払い込んだ → 「現金」
- 銀行振込で払い込んだ → 「普通預金」
資本準備金との違い|会社法445条のルールをわかりやすく解説
資本金と並んで登場するのが「資本準備金」。これは、発行価額のうち資本金に計上しなかった部分を積み立てるもので、会社法第445条に基づくものです。
資本金50万円 + 資本準備金50万円 = 発行価額100万円
増資などの場面でよく出てきますが、設立時には一括で資本金にするのが一般的です。
会計ソフトでよくある初期設定ミスとその修正方法
初期設定で「資本金」の勘定科目が抜けていたり、「現金」で処理していたりすることがあります。税務申告書との整合性が取れなくなるので、修正は早めに行いましょう。
freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトでも、科目設定の確認は最初にチェックしておこう!
資本金は経費ではない?創立費・開業費との違いに注意
資本金と経費の違いを税務的に整理|損金不算入の意味
資本金はあくまで会社の”元手”です。経費とは違い、税務上も「損金不算入」となります。
“損金”とは、いわば会社の経費と考えていいでしょう。資本金は経費にできないため、法人税の計算には使いません。
設立時の支出は「創立費」「開業費」になる?勘定科目の判断基準
登記費用や定款認証費用など、会社設立時にかかったお金は、「創立費」「開業費」として処理します。
費用の種類 | 勘定科目 | 特徴 |
---|---|---|
登記費用 | 創立費 | 繰延資産として5年以内に償却可能 |
名刺やHP作成費 | 開業費 | 同上。事業開始前ならOK |
ただし、何でもかんでも創立費や開業費にできるわけではありません。
注意:対象外となるものの例
- 設立後に購入した設備やソフトウェア → 固定資産で処理
- 商品仕入れや人件費などの継続的支出 → 通常の経費(販売費・管理費)
- 役員報酬 → 損金算入には定款や議事録による根拠が必要
- 家賃や電気代 → 事業開始後の支出は原則として「地代家賃」や「水道光熱費」などの通常の経費科目で処理(※開始前の一部期間については開業費として処理できる場合もあり)
- 車両の購入費 → 基本的に「車両運搬具」などの固定資産で処理し、減価償却が必要(※設立準備段階で使用していた車でも、法人の資産として登記・登録が必要)
- 会社設立前の飲食代や接待交際費 → 一般的に開業費には含めず、事業との直接的関連性が証明できない場合は費用として認められないリスクあり
- 国家資格取得のための研修費用 → 個人のスキルアップとみなされ、法人の損金にならない可能性が高い(会社業務と直接関連する場合は要検討)
- 設立後に購入した設備やソフトウェア → 固定資産で処理
- 商品仕入れや人件費などの継続的支出 → 通常の経費(販売費・管理費)
- 役員報酬 → 損金算入には定款や議事録による根拠が必要
- 家賃や電気代 → 事業開始後の支出は原則として「地代家賃」や「水道光熱費」などの通常の経費科目で処理(※開始前の一部期間については開業費として処理できる場合もあり)
- 車両の購入費 → 基本的に「車両運搬具」などの固定資産で処理し、減価償却が必要(※設立準備段階で使用していた車でも、法人の資産として登記・登録が必要)
- 設立後に購入した設備やソフトウェア → 固定資産で処理
- 商品仕入れや人件費などの継続的支出 → 通常の経費(販売費・管理費)
- 役員報酬 → 損金算入には定款や議事録による根拠が必要
- 家賃や電気代 → 事業開始後の支出は原則として「地代家賃」や「水道光熱費」などの通常の経費科目で処理(※開始前の一部期間については開業費として処理できる場合もあり)
- 設立後に購入した設備やソフトウェア → 固定資産で処理
- 商品仕入れや人件費などの継続的支出 → 通常の経費(販売費・管理費)
- 役員報酬 → 損金算入には定款や議事録による根拠が必要



“設立準備のために使ったお金”と考えるとイメージしやすいよ!事業が始まった後の支出はもう「開業費」じゃなくて、普通の経費として仕訳しようね。
登記費用や定款認証費用など、会社設立時にかかったお金は、「創立費」「開業費」として処理します。
費用の種類 | 勘定科目 | 特徴 |
登記費用 | 創立費 | 繰延資産として5年以内に償却可能 |
名刺やHP作成費 | 開業費 | 同上。事業開始前ならOK |



一見“資本金で払ったから経費になる”と思いがちですが、資本金は資本金。出所ではなく用途で判断しましょう!
「資本金で支払った=経費計上できる」はNG|誤処理の事例と修正
たとえば資本金から税理士への報酬を支払って、そのまま「支出=経費」と思い込んで処理してしまうケース。これは誤りです。正しくは「支払手数料」などで費用処理する必要があります。
仕訳もこうなります:
(借方)支払手数料 100,000円 /(貸方)普通預金 100,000円
事例:資本金を使ってHP制作を依頼したが経費にせず処理したD社
D社は設立直後にHP制作会社へ20万円を支払い、「資本金から出したから資本扱いでいいよね」と判断し帳簿に反映しなかった。しかしこれは誤りで、実際には「開業費」として記帳が必要。税理士の指摘で修正申告を行うことになりました。
税務署に提出する書類との整合性が取れているか?
「法人設立届出書」や「青色申告の承認申請書」など、税務署に提出する書類と帳簿上の内容が一致していないと、後で修正や確認が必要になるケースも。
信頼性の高い資料の一例として、国税庁|法人設立時の手続きを参考にしておくとよいでしょう。
まとめ|資本金の会計処理は、法務・税務・会計の一体設計が重要
帳簿・登記・申告の整合性が崩れると税務調査で指摘される
会計帳簿と登記書類、そして税務署への申告書類。これらが一致していないと、税務調査の際に「なぜズレているのか?」と指摘される可能性があります。
記帳代行だけでなく、登記と税務も一貫して相談しよう
資本金の処理は、記帳だけでなく、設立登記や税務申告とも密接に関係しています。専門家に相談しておけば、あとで修正に追われるリスクを大きく減らせます。
専門家と立ち上げから連携することで、経営もスムーズに
司法書士、税理士、公認会計士など、立ち上げ初期から相談できる体制があることで、経営のスタートダッシュが格段にスムーズになります。



わからないまま進めてしまうと、後で帳簿を見直す手間が倍になります。「最初が肝心!」という言葉、まさにこの場面にぴったりです!
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