起業家として走り出すと、「自分の思いを形にする」ことにワクワクしながらも、組織づくりやマネジメントの壁にぶつかる人も多いのではないでしょうか。
たとえば、以前お会いしたある女性起業家は、フリーランスから法人化した直後、「社員との距離感がわからない」「経費精算ってどこまで管理するの？」と悩み、夜な夜なネットで検索する日々が続いたそうです。自由な発想で突き進みたいのに、管理や手続きの壁がどんどん立ちはだかる──そんな葛藤を抱える姿に、あなた自身も少し似た気持ちを感じるかもしれません。
「自由に動きたいけど、人を雇ったら管理しなきゃいけない？」
「マネジメントって窮屈そう…起業家には向いてないんじゃ？」
そんな疑問にお応えするため、本記事では「起業家マインド」と「マネジメント」がどうすれば両立できるのか、具体例を交えながら解説していきます。
起業家マインドとマネジメントはなぜ衝突するのか？
起業家は「こうしたい！」という強い思いを原動力に行動する一方で、組織にはルールや安定が求められます。このギャップが摩擦を生むことも。
そもそも「起業家マインド」とは何か？行動特性と心理的背景
起業家マインドとは、一言で言えば「自ら機会をつくり、行動して未来を切り開く力」です。たとえば、周囲がまだ気づいていない問題を見つけて新しいサービスを始めたり、誰もやったことのない方法に挑戦したりする姿勢。
特徴的なのは、リスクをチャンスと捉えたり、失敗を恐れない行動力です。これは心理学的には「自己効力感（self-efficacy）」が高い状態。つまり「自分はやればできる」と信じられる力ともいえます。
この自己効力感は、たとえばコーチングで使われる「GROWモデル」──Goal（目標）、Reality（現状）、Options（選択肢）、Will（意志）というフレームで整理すると、具体的な行動への落とし込みがしやすくなります。
また、組織の中で自分が大切にしたい価値観や働き方の軸を明確にする「キャリアアンカー」の視点から見ても、起業家マインドは“起業独立型”や“自由創造型”などのタイプと重なります。
マネジメントが求める「安定」とのギャップとは
一方でマネジメントは「仕組みで人と組織を動かす技術」。現場の混乱を避け、ルールや手順に従って効率的に動いてもらうことが大切です。
ここで衝突が起こります。起業家は「とりあえずやってみよう！」で動くのに対し、マネジメントは「決めた通りにやってね」が基本。このギャップがストレスになることも。
よくある誤解｜自由と管理は本当に相反するのか？
「自由を守るには、ある程度の管理が必要」。この考え方に切り替えられるかどうかがカギです。
管理とは、束縛することではなく「再現性を高めるための仕組み化」。起業家のビジョンをチームに伝え、再現可能な行動に落とし込むことは、自由な挑戦の土台になります。
「管理＝窮屈」というイメージは根強いですが、むしろ管理の質が高いほど、起業家自身が自由になれる余白が増えますよ！
組織化における起業家マインドの活かし方
会社をつくり、人を雇うと、自分一人では完結できない業務が増えていきます。そんな中でも、起業家マインドを活かして組織を育てていく方法があります。
ビジョンと行動で仲間を巻き込むリーダーシップ
起業家の最大の武器は「情熱あるビジョン」です。数字や戦略も大切ですが、「なぜこの事業をやるのか？」という想いを言葉で語れることが組織づくりの第一歩。
たとえば、元エンジニアのAさんは「子育て中のママが働きやすい社会をつくりたい」という思いで起業。自ら行動する姿が共感を呼び、少しずつ仲間が集まっていきました。
「任せる力」を育てるマネジメントのコツ
すべてを自分で抱えてしまうと、どこかで限界が来ます。ポイントは「任せられる仕組み」を作ること。たとえば以下のような工夫があります：
あなたの職場では、どんな仕組みがあればもっと任せやすくなると思いますか？ ぜひ、自分の状況に置き換えて考えながら読み進めてみてください。
- 業務マニュアルを作って属人化を防ぐ
- 権限と責任のラインを明確にする
- 1on1で心理的安全性を確保する
これらは大企業だけの話ではなく、2〜3人のスタートアップでも役立ちます。
行動科学に学ぶ｜「仕組み化」と「人間らしさ」の両立術
人は「やる気」で動くこともあれば、「仕組み」で動くこともあります。両者をバランスよく使うのが現代マネジメントの基本。
例として、習慣化の心理学「ナッジ理論」では、選択肢の提示方法を工夫するだけで行動が変わることがわかっています（例：提出期限をカレンダー共有するだけで期限遵守率がUP）
人を動かすのは「想い」＋「仕組み」。この両輪がそろったとき、組織は大きく動き出します。
組織を育てるマネジメントの基礎と実務
ここからは、実際に人を雇ったり、会社としての制度を整えるときに必要な知識を紹介します。
たとえば、起業2年目のCさんは、初めて社員を雇った際に「労働条件通知書って何を書けばいいの？」「給与の締め日と支払い日はどう設定する？」と戸惑いました。顧問税理士に聞いても「そこは社労士さんの領域ですね」と言われてさらに混乱。結局、設立後しばらくしてから専門家に相談し直すことになり、最初の契約書をすべて見直す羽目に。
こうした「よくわからないまま進めてしまった結果、後でやり直しになる」ケースは本当に多いのです。
法人設立後に必要な労務・税務・法務の管理とは？
法人を設立すると、以下のような実務が発生します：
- 社会保険・労働保険の加入手続き
- 税務署への法人設立届出、青色申告の承認申請など
- 契約書の整備、雇用契約や就業規則の準備
これらを怠ると、後からトラブルや追加コストにつながるため注意が必要です。設立後の手続きについて詳しくはこちらの記事も参照してください。
起業家がハマりやすい「管理業務の落とし穴」
たとえば「給与の支払い方法が曖昧で社会保険未加入だった」「業務委託といいながら実質は雇用契約だった」など、知らずに違法行為になってしまうことも。
実例として、B社では業務委託契約を結んでいたスタッフが実質的に毎日8時間働いており、労基署から是正勧告を受けました。法的リスクを最小限にするには、社会保険労務士などの専門家に早めに相談することが重要です。
成長する組織に必要なルールとカルチャーのつくり方
制度と文化、どちらも大切です。たとえば：
- 週1回の朝会で全員の進捗を共有する
- バリュー（行動指針）を壁に貼って可視化する
- 「ありがとうカード」など感謝の文化を仕組みにする
小さな工夫の積み重ねが、信頼と連携の文化をつくります。
制度だけでは人は動きません。文化だけでも続きません。両方が噛み合って初めて、強いチームになります。
まとめ｜「管理されない管理」で、強い組織をつくる
起業家マインドとマネジメントは、実は「相反するもの」ではなく「補い合うもの」。
情熱や行動力を活かしながら、仕組みとチームで実現していく。それがこれからの時代の起業スタイルです。
無理に管理者っぽくなる必要はありません。「自分らしく、でも人を育てる」そんなマネジメント像を描ければ、組織は自然と育っていきます。
ここまで読んでくださったあなたに、ひとつだけ問いかけさせてください。
あなたが明日からできる“任せる工夫”は、何でしょう？
それは、仕事を引き継ぐときに簡単なメモを残すことかもしれませんし、今いるメンバーに「ありがとう」を言葉にしてみることかもしれません。
小さな一歩が、自由と信頼の組織をつくる大きな流れにつながります。
「管理＝自由の敵」と思っていた方にこそ伝えたい。本当の自由は、信頼できる仕組みと仲間がいてこそ手に入るんです。
明日から、あなたが1つだけ“任せる仕組み”を考えるとしたら何にしますか？ それが、自由に近づく第一歩かもしれません。
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