「会社、そろそろ設立しようと思ってるんです。でも、印鑑ってまだ必要なんですか？」
ある日、創業支援セミナーの後に相談に来た、30代の起業準備中の男性がこんなふうに声をかけてくれました。
「なんとなく、電子化の時代だからもう印鑑はいらないって思ってて。でも今日の講義で『会社の実印が必要になることもある』って聞いて、ちょっと焦ってます……」
——こうした疑問、不安、そして“ちょっと焦る気持ち”、あなたにも思い当たるところがあるのではないでしょうか？
会社設立に必要なもの、やるべきことはたくさんありますが、その中でも“印鑑”の扱いはちょっとややこしい。なぜなら、制度としては電子化が進んでいる一方で、実務ではまだまだ印鑑が求められる場面があるからです。
この記事では、その“ズレ”を丁寧にひも解きながら、「本当に印鑑は必要なのか？」「どの場面で必要になるのか？」をわかりやすく解説していきます。
あなたの起業という“冒険”が、無駄な遠回りやストレスなくスタートできるよう、実務と気持ちの両面から寄り添ったガイドをお届けします。
会社設立に印鑑は必要？法律と実務のリアル
会社設立における「印鑑」の扱いは、法律上のルールと、現場での“お作法”の両方を知っておく必要があります。
会社設立時に必要な印鑑とは？法務局での実務を解説
まずは結論から。
はい、印鑑（＝会社の実印）は必要です。
会社を設立する際、法務局に「印鑑届書」という書類を提出しなければなりません。これは、会社代表印を法務局に登録するためのもの。印鑑登録をしておくことで、のちのちの登記事項証明や印鑑証明の取得が可能になります。
たとえば、「合同会社やまねこ商会」という会社を立ち上げようとしている田中さんがいるとします。登記申請の書類を整えて法務局に持ち込もうとしたところ、「あっ、印鑑届書に押す印鑑がない！」と気づいて慌てて作りに走る……。これ、意外と“起業あるある”なんです。
印鑑届書の提出は今も必須｜代表印の役割と必要性
この印鑑届書というのは、言わば会社の「身分証明に使うハンコ」です。たとえば将来的に契約書を交わすときや、銀行口座を開設するとき、行政からの申請書を出すときなど、代表者印の証明を求められる場面はたくさんあります。
印鑑届出をしていないと、印鑑証明書が発行できず、取引先に信用されづらくなる場合も。
制度の変化があると「じゃあ印鑑いらないんだ」と誤解されがちだけど、登記という“法律の世界”ではまだまだ現役のアイテムなんだよ。
電子化が進んでも「印鑑不要」とは限らない理由
最近は「電子定款」や「電子契約」などが広まり、「もうハンコって不要なのでは？」と思う方も増えています。
たしかに、以前と比べて印鑑を押す回数は減りました。でも、これは“全体の中の一部の場面”での話。会社設立に関しては、法務局の登記申請では今も変わらず印鑑が必要です。
定款と印鑑の関係｜紙定款・電子定款の違いとは
定款とは、会社の「設計図」であり「憲法」のようなもの。もっとかみ砕いて言えば、これから建てる家の“設計図”のようなものです。どんな間取りで、どこに玄関があって、誰が住むのかをあらかじめ決めておくイメージ。それがないと、大工さん（＝公証役場や登記官）もどうしていいかわからない、そんな存在です。
つまり、定款は会社の土台をつくる大事な出発点なのです。
紙定款には実印の押印＋印紙代4万円が必要
紙で定款を作成して公証役場で認証してもらう場合、まず発起人（設立者）の実印を押印する必要があります。そして、印紙税法により4万円の印紙を貼る義務があります。
起業初期にとってこの4万円は正直痛い……。
電子定款では印紙代不要｜ただし電子署名と実印は必要
一方、定款を電子化してPDFにし、電子署名を行う「電子定款」なら、印紙代4万円が不要になります。
ここでのポイントは、「電子＝印鑑不要」ではないということ。電子定款でも、実印に基づく電子署名が必要です。事前に電子証明書（ICカード型など）を取得しておく必要もあります。
印紙代4万円が浮くのは大きいけど、電子署名の環境整備が必要。最初から専門家に頼んで任せるのも、けっこう現実的な選択肢だよ。
電子定款を利用する際の流れと準備するもの
では、電子定款で設立するには何が必要でしょうか？
ここで、登場してもらいましょう。起業初心者の田中さん。
田中さんは、「合同会社やまねこ商会」を立ち上げるべく、紙定款よりコスパがよいという理由で電子定款を選びました。でも、そこで初めて「電子署名って何？」「電子証明書ってどうやって手に入れるの？」と壁にぶつかります。
最初は自力でやろうとしましたが、ICカードリーダーの設定に手こずり、PDFの作り方もわからず、途中で一度心が折れそうに……。
そこで彼は、知人に紹介された司法書士に相談。電子定款の作成から署名、提出まですべて代行してもらえると知って、「もっと早く頼めばよかった！」と後悔したそうです。
このように、電子定款はコスト削減につながる一方、準備に手間がかかります。
ただし、司法書士などの専門家に依頼する場合、これらの準備はほとんど代行してもらえるため、発起人自身が用意するのは実印のみで十分というケースも多いです。
逆に「すべて自分でやる」場合には、電子証明書やICカードリーダーなど細かな準備が多く、一定のITスキルも必要になります。
そのため、初心者にとっては「最初から専門家に依頼してしまう」方がスムーズで、トータルのストレスや手間を減らすことにつながります。
もし「どうしても自分でやりたい」という場合には、法務省や登記支援サイトなどの公的なガイドラインをしっかり確認したうえで取り組むのが安心です。
設立後に印鑑は使う？実務での使用場面を整理
設立が終わって「ハンコから解放された！」と思ったあなた。ちょっと待ってください。
実は、設立後こそ印鑑を使う場面がたくさんあるのです。
銀行口座開設、許認可申請、契約書などでの印鑑の扱い
たとえば銀行口座の開設時。多くの金融機関では、登記簿とあわせて印鑑証明書の提出が求められます。これは、あなたの会社が「ちゃんと登録された法人であること」を証明するためです。
また、介護・建設・運送業などでは行政の許認可が必要で、そこでも印鑑が求められます。
印鑑が不要な契約も増加中｜電子契約と印紙税の関係
一方で、デザイン会社との業務委託契約や、定額制のクラウドサービスとの契約などでは、印鑑なしの電子契約が増えてきています。
あなた自身はどうでしょうか？
取引先と契約を交わすとき、「この契約、印鑑が必要なのかな？電子サインでもいいのかな？」と迷った経験はありませんか？
クラウドサインやfreeeサインなどの電子契約ツールを使えば、
- 押印不要
- 印紙税がかからない
- 郵送の手間もゼロ
と、まさに「起業家の味方」と言える存在です。
ただし相手が紙文化の会社だと、電子契約を断られるケースも。結局は“相手と場面”に応じた柔軟な使い分けが大事だよ。
印鑑を作るかどうか迷ったら？判断基準と現実的な選択
ここまで読んで「やっぱり印鑑って必要なんだな…」と思った方。
でも「どうせ使うのなら、ちゃんと準備しておこう」と考えられたあなたは、一歩リードしています。
印鑑を作るか迷ったときの判断基準は次の通りです：
- 登記用（必須）
- 銀行・行政手続き用（必要になることが多い）
- 契約用（相手による）
つまり、「迷うくらいなら作っておいて損はない」というのが実情です。ネットで安価に作れるサービスも増えており、費用は1万円以下に収まることがほとんどです。
まとめ｜印鑑の必要性は“相手”と“目的”で決まる
印鑑が不要になる時代は、たしかに近づいています。
でも、現実には「登記」「銀行」「行政」の3つの世界では、まだまだ“印鑑文化”が根強く残っています。
だからこそ、起業家には次のような視点が求められます：
- 相手が印鑑を求めてくる場面はどこか？
- そこに備えて、自分は何を準備すべきか？
印鑑も電子署名も、使い方次第であなたの“信頼”を守る武器になります。
ひいろのコメント：必要なところではしっかり押す。合理化できるところは思いきって電子化する。起業家に必要なのは「どっちかに偏らない柔軟さ」なんだよね。
もしあなたが今、印鑑をどうするかで迷っているなら——
「登記用の実印を準備する」「電子署名について調べてみる」「信頼できる専門家に一度相談する」など、できる範囲で小さな一歩を踏み出してみてください。
行動を起こすことが、不安を自信に変える最初のスイッチになります。
でも、現実には「登記」「銀行」「行政」の3つの世界では、まだまだ“印鑑文化”が根強く残っています。
だからこそ、起業家には次のような視点が求められます：
- 相手が印鑑を求めてくる場面はどこか？
- そこに備えて、自分は何を準備すべきか？
印鑑も電子署名も、使い方次第であなたの“信頼”を守る武器になります。
必要なところではしっかり押す。合理化できるところは思いきって電子化する。起業家に必要なのは「どっちかに偏らない柔軟さ」なんだよね。
さあ、あなたはどっち派？
・全部デジタルでいく？
・必要なところだけ印鑑で押す？
・そもそも印鑑、まだ作ってない？
なお、「自分で会社設立をしてみたいけど、なるべく手間を減らしたい」という方は、会社設立freeeのようなオンラインツールを使ってみるのもおすすめです。便利なサポートとフォーム入力だけで、登記までスムーズに進められます。
▶ 詳しくはこちら：会社設立freeeを使ってみる
コメント