「法人化しよう」と決めたものの、最初につまずくのが意外と“印鑑”です。
「代表印ってどれ?」「銀行印って必要?」「ネットで買えるの?」——情報が多すぎて、逆に混乱してしまう方も多いのではないでしょうか。
実は、印鑑は単なる道具ではありません。会社の“信頼”や“意思決定”を形にする、大切な「会社の顔」なんです。
このガイドでは、印鑑の種類や選び方、失敗しない管理方法まで、会社設立のプロがやさしく解説していきます。
会社設立時に必要な印鑑とは?まずは全体像を把握しよう
会社を設立する際には、複数の印鑑が必要になります。個人事業主時代とは違い、「会社の意思を表す手段」として、印鑑の管理が非常に重要になります。
会社設立で必要になる3つの印鑑とは?(代表印・銀行印・角印)
会社設立時に最低限用意しておくべき印鑑は、以下の3つです:
- 代表印(実印):法務局に登録する印鑑。契約書など重要書類に使用。
- 銀行印:会社名義の銀行口座開設に必要。
- 角印:請求書や領収書など日常業務でよく使う。
これらをまとめて「会社印セット」として販売している業者も多く、まとめて作ることで費用も手間も抑えられます。

会社印は、いわば「会社の分身」です。きちんと揃えておくことで、取引先や銀行からの信頼も変わりますよ。
印鑑が必要な理由|登記や銀行、契約で求められる場面
会社の設立登記を行う際、定款の認証や設立登記申請書などに代表印が必要です。また、銀行口座開設時や重要な契約を結ぶ際にも、それぞれの印鑑を使い分ける場面が出てきます。
印鑑はただの“ハンコ”ではなく、法的効力を持つ「会社の意思決定の証明」になります。
よくある誤解|「とりあえず1本あればいい」は本当?
「1本の印鑑を使いまわせばいいでしょ?」と思いがちですが、設立登記だけであれば代表印(実印)1本だけでも問題ありません。
ただし、その後の実務では「代表印」「銀行印」「角印」といった使い分けが重要になります。たとえば、銀行印をなくした場合、口座の不正引き出しリスクにもつながりかねませんし、請求書や契約書にすべて実印を押すのも管理上の負担になります。
まとめると:
- 登記だけなら代表印1本でOK
- 業務での信頼性・効率を考えると3本使い分けがおすすめ



「とりあえず1本」から始めるのもアリ。ただし、後から必ず“増える”と思っておくと気が楽ですよ。
会社印鑑の選び方・作成方法|失敗しないための基礎知識
いざ印鑑を作ろうとすると、素材や書体、値段など選ぶ要素が多く迷ってしまいがち。ここでは、実務的に失敗しないためのポイントを整理します。
印材・書体・サイズの選び方|見た目より「実用性」
印材には「柘(つげ)」「黒水牛」「チタン」などさまざまな種類があります。耐久性が高く偽造リスクが低いものを選ぶのが安心。書体は「篆書体(てんしょたい)」が最も一般的で、法的な信頼性も高く見られます。
サイズは、代表印が18mm、銀行印が16.5mm、角印が24mm程度が目安です。
また、印鑑には法務局でのサイズ規定があり、「1cm以上3cm以内の正方形に収まること」が条件とされています(詳細は印鑑届出書に記載あり)。一般的には代表印は18mm程度が安心です。



見た目のおしゃれさより、耐久性と実用性を重視しましょう。設立当初はコストを抑えつつ、将来的にグレードアップするのもアリです!
実印の登録と注意点|登録しないとどうなる?
代表印は法務局で印鑑登録を行うことで“実印”として効力を持ちます。登録していない印鑑を使用すると、登記が通らないだけでなく、トラブルの元にもなります。
印鑑証明書も必要になりますので、法人設立後は速やかに取得しておきましょう。
ネット注文と店舗作成の違い|スピード・コスト・信頼性を比較
最近はオンラインで簡単に印鑑を注文できます。価格も手頃で納期も早いですが、チープな素材だと耐久性に不安が残る場合も。
昔ながらの印鑑専門店では、職人がひとつひとつ手作業で仕上げてくれるため、質の高い素材や文字の彫り方に安心感があります。銀行や官公庁での信頼性を重視したい場合や、長く使いたい場合には、店舗での作成も検討してみる価値があります。
それぞれにメリットがあるので、「スピード重視」「コスト重視」「信頼性重視」など、自分の目的に合わせて選ぶのがポイントです。
印鑑の使い分けと運用ルール|トラブルを防ぐ管理方法
会社を運営していく中で、印鑑の管理・使い分けが甘いとトラブルにつながることも。ここでは運用上の注意点を見ていきましょう。
代表印と銀行印の使い分け方|契約と資金管理で混同しないコツ
代表印は「意思決定の証」、銀行印は「金庫の鍵」と覚えましょう。
たとえば、あなたが冒険者だとしましょう。代表印は「王から授けられた正式な証書」、銀行印は「財宝を守る鍵」。それを同じ袋に一緒に入れておいたら……危ないですよね?
たとえば、大口の契約書には代表印、銀行での振込や口座開設には銀行印を使用します。同じ印鑑を使い回すと、万一のときに「誰が押したのか」が曖昧になり、リスクが高まります。



印鑑を“誰が、何の目的で”使うのかが明確になる運用ルールを作っておくと安心です。
印鑑の保管ルール|盗難・紛失・なりすましリスクを防ぐには?
印鑑は必ず施錠できる保管場所に保管し、使用者を限定することが大切です。できれば代表印と銀行印は別の場所に分けて保管しましょう。
また、社員が増えてくると「押印ルール」や「印鑑台帳」の作成も検討を。万が一のなりすましや不正使用を防ぐことができます。
印鑑トラブル事例と教訓|「退職社員が印鑑を…」というケースも
ある企業では、総務担当者が退職時に印鑑を持ち出し、旧社名で勝手に契約書を交わしていたというケースがありました。結果的に会社がトラブル対応に追われ、信用問題にも発展。
印鑑管理が甘いと、小さな油断が大きなリスクに直結します。
PDF書類に使える「電子印」とは?日常業務での活用例
電子印ってむずかしそうに聞こえますが、イメージとしては「パソコンの中で押すハンコの画像」です。
たとえば、紙の見積書や請求書をわざわざ印刷してハンコを押して……という作業をせずに、PDFにそのままポンッと電子印を貼りつけて相手に送れるのが電子印です。
これがあれば、プリンターもインクも封筒もいらないので、作業がとてもラクになります。
freee(フリー)などのサービスでも、この電子印を使って書類の作成・送信ができます。
最近では紙でなくPDFやExcelに直接押せる「電子印」が注目されています。
たとえば、請求書や見積書をメールで送る際、「電子印を押したPDF」で対応すれば、印刷・郵送の手間が不要。「電子印」は画像ファイル形式で導入でき、導入コストも低めなので、創業初期から導入しておくと業務効率化に繋がります。
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電子契約と電子印の違い|混同しやすいポイントを整理しよう
「電子印=電子契約」と思われがちですが、実はまったく別物です。
- 電子印:画像形式でPDFなどに“見た目として”押印できるもの(法的効力は限定的)
- 電子契約(電子署名):法的効力を持つデジタル認証(クラウドサインやDocuSignなど)
日常業務では電子印を活用し、正式契約では電子署名を使い分けるのがポイントです。



請求書など「見た目で信頼感を出す」には電子印が便利。契約の場面では「署名」のように証明力がある電子契約を使い分けましょう。
まとめ|印鑑は「会社の顔」、設立時から丁寧に準備を
印鑑を整えることは、経営者としての覚悟を“目に見える形”にする第一歩です。
「この会社は信頼できそうだな」と思われるかどうかは、こうした準備から始まっています。
代表印・銀行印・角印といった種類や使い方をしっかり理解し、用途ごとに使い分けることで、法務・経理・営業すべての場面でスムーズな対応が可能になります。
また、電子印や電子契約といった新しい手段も積極的に取り入れることで、業務効率も飛躍的に向上します。
未来の自分を助けるためにも、いまの自分が“きちんと備える”。それが、成功への確かな布石になるはずです。



どんなに小さな会社でも、印鑑の準備ひとつで信頼は変わります。「ちゃんとしてるな」と思われる第一歩を、印鑑から始めていきましょう!










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