「言ったのに、なんで動いてくれないんだろう…?」
たとえば、資料の提出期限を何度も伝えたのに遅れてしまう部下。
あるいは、自主的に動いてほしいと思って任せた仕事なのに、結局こちらが手を出す羽目になる……。
起業したばかりのある日、あなたはそんな経験をしたことがありませんか?
もしかしたら、そのたびに「自分の伝え方が悪かったのか?」「そもそも人を雇うのが早かったのか?」と、自問自答をくり返してきたかもしれません。
最初は情熱も意志も十分。けれど、誰かと一緒に動き出すと、どこかで思うように進まない。そんなジレンマにぶつかる人は少なくありません。
この記事では、「指示しなくても動く組織」を育てる方法を、実例や理論を交えてやさしく解説していきます。
ポイントは、ティール組織の思想や、リーダーの“在り方”にあります。
「人を動かす」ではなく、「人が動きたくなる」状態をどうつくるか?
そんな問いに、一緒に向き合っていきましょう。
経営者マインドとリーダーシップの基本|「指示しないで動く組織」の出発点
昔、まだ社員が2人だった頃のある若手経営者がいました。
彼は「自分が全部やらなきゃ」という責任感から、朝から晩まで指示と管理に追われていました。
ところがある日、体調を崩して休んだとき、会社は完全に止まってしまったのです。
そのとき彼は気づきました——「これは組織じゃなくて、ただの一人舞台だったんだ」と。
ここから彼のリーダーシップが変わっていきました。
そもそも経営者マインドとは?リーダーと経営者の違い
「リーダーシップ」と「経営者マインド」、同じように聞こえるかもしれませんが、実は違います。
リーダーは“今あるチーム”を導く人。
経営者は“そもそも何のためにそのチームがあるのか”を定める人。
経営者マインドとは、地図のない場所を歩き出す覚悟であり、
「誰も正解を教えてくれない世界」で決断し続ける強さです。

正解がないからこそ、「自分で決めて、自分で責任を持つ」。それが経営者のリアルな日常です。
「指示しないで動く組織」とは何か?誤解されがちな理想像
「指示しない」と聞くと、「自由すぎてまとまりがないチーム」を想像する人もいます。
でも、本当に目指すのは、**“共通の目的でつながっている組織”**です。
みんなが「自分の判断で」「自分の言葉で」前に進む。
そこに上下関係や強制は必要ありません。
たとえば、登山隊のように、それぞれの役割を果たしながら頂上を目指すようなチーム。
そんな状態が“指示しないで動く組織”です。



「自由に動ける組織」は、実は“信頼の土台”があってこそ。そこを忘れてはいけませんね。
経営者に求められる“在り方”とは?自分の行動が組織をつくる
あなたの行動ひとつひとつが、チームの“空気”をつくります。
「失敗してもいい」と言いつつ、部下のミスに強く当たってしまった。
「挑戦してほしい」と言いながら、自分はいつも無難な判断をしている。
そんなズレがあると、組織には「本音と建前」の文化が根づいてしまいます。
逆に、あなたが素直でいようとすると、チームも安心して素直になれる。
それが「在り方」が組織をつくる、という意味です。
経営者マインドを育てるスキルと行動習慣
マインドは“思考法”ではなく“習慣”から育ちます。
ここでは、経営者として信頼されるための実践スキルと行動パターンをご紹介します。
信頼が組織を動かす|経営者に必要なコミュニケーション力とは
GROWモデルをご存じでしょうか?
これは、たとえるなら「旅行の計画」に似ています。
たとえば、旅に出るとき、まず「どこへ行きたいか(Goal)」を決め、次に「今どこにいるのか(Reality)」を確認しますよね。
そして「行き方はいくつあるか(Options)」を考え、最後に「じゃあ、どうやって行こうか(Will)」と決断する。
ビジネスの会話もこれと同じ。
部下と話すとき、「何を目指すの?」「今はどうなってる?」「どういう選択肢がある?」「じゃあどうする?」といった問いかけが、自然と信頼と成長を育ててくれます。
- Goal(目標)
- Reality(現状)
- Options(選択肢)
- Will(意思)
これは、コーチングで使われる思考のフレームですが、実は経営者にも役立ちます。
部下と会話をするとき、いきなり結論を押しつけるのではなく、
「今、どう思ってる?」「どうしたい?」と対話する。
これだけで信頼の温度が変わってきます。



「聴くこと」は、最高のマネジメントツールです。
「言葉より行動」が信頼を生む|率先垂範の心理的影響
「ありがとう」は言うけど、自分は朝の掃除をしない。
「お客様第一」と言うけれど、忙しいと対応が雑になる。
こうした“ズレ”があると、メンバーは言葉を信じなくなります。
逆に、小さな行動が積み重なると、あなた自身が「言葉以上の説得力」を持つ存在になります。
ティール組織に学ぶ経営マインドの育て方|支配から共創へ
ティール組織とは、“命令型”ではなく“進化型”の組織。
たとえるなら、学級委員が上から指示して動かす学校の活動が「命令型」なら、文化祭でみんなが自分の役割を考えて主体的に動くのが「進化型」。
つまり、指示に従うのではなく、自分たちで目的を持ち、話し合いながら最善を見つけていくチームです。
特徴は以下の3つです:
- 自主経営(セルフマネジメント)
- ホールネス(本来の自分を出せる)
- 存在目的(エボリューショナリーパーパス)
つまり、会社は“社長のための組織”ではなく、
“社会に対して意味を持つ生命体”のような存在になるのです。
外部リンク:リクルートワークス研究所|ティール組織の解説



「管理しなきゃ」から「支えよう」へ。経営者の視点が変わるだけで、チームが動き出します。
自律型組織を育てるための組織づくりと制度設計
信頼と仕組み。
この2つが揃って初めて、“自律型組織”は動き出します。
セルフマネジメントと心理的安全性|ティール組織における実践例
あるスタートアップでは、毎週「何でも言っていい会議」を行っています。
上司に対しても、「これは納得できません」と言ってOK。
最初は勇気がいりますが、やってみると驚くほど安心感が生まれ、
ミスも相談も早くなる——結果として、パフォーマンスも上がっていくのです。
心理的安全性がある組織は、ミスを責めず、チャレンジを歓迎します。



「大丈夫」と思える空気は、最強の制度です。
「ホールネス」とは?個人の“ありのまま”が活きる環境づくり
人は、仮面をつけたままでは力を発揮できません。
「育児の話をしにくい」
「プライベートの悩みはNG」
そんな空気があると、本当の信頼関係は育ちません。
たとえば、Slackで雑談チャンネルをつくったり、
週1回の“雑談会議”を導入するだけでも、組織の温度は変わっていきます。
指示命令から目的共有へ|起業初期から始める文化づくりのコツ
目的は“伝える”ものではなく、“共に育てる”ものです。
たとえば、あるベンチャー企業では、事業のミッションを経営陣だけで決めるのではなく、全社員との対話ワークショップを通じて言語化しました。結果として、その目的は社員一人ひとりの“自分ごと”となり、行動にも自然と一貫性が生まれたそうです。
だからこそ、毎週の朝礼で「なぜこの事業をしているのか」を語り、
新メンバーが入ったときは「自分の言葉」で伝え直す。
それが、文化になり、やがて組織のDNAとなります。



「一度伝えた」じゃ足りません。繰り返すことが文化になります。
まとめ|経営者マインドとリーダーシップが、強い組織をつくる
“組織”とは、経営者の鏡。
たとえば、社内でいつも笑顔が絶えない会社には、きっと誰よりも笑顔を絶やさない経営者がいます。
逆に、誰も発言しない会議には、無意識に空気を締めつけてしまっているリーダーがいるのかもしれません。
もし今、誰も動かないと感じているなら、それは責めることではなく、
あなた自身の“在り方”を見直すチャンスです。
人を動かすのではなく、
人が動きたくなる土壌をつくる。
そのために必要なのは、「完璧な戦略」よりも、
「自分らしい誠実さ」かもしれません。



あなたのまっすぐさに、人は惹かれます。
だから大丈夫。自分を信じて、一歩踏み出してみてください。










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