起業をすると、どうしても不安や焦り、孤独を感じる瞬間がありますよね。「これでよかったのかな」「なんでこんなにうまくいかないんだろう」――そんな風に落ち込んでしまうことも珍しくありません。
この記事では、そんなときに心を整えるための「ノート思考整理術」について解説していきます。特別なスキルや知識は不要。1冊のノートがあれば、思考が整理されて、気持ちがスッと軽くなります。
起業家が「落ち込む理由」と思考の整理が必要なワケ
起業家の落ち込みは、単なる気分の問題ではなく、行動や判断に直結する大切なテーマです。ここでは、落ち込みの背景と、なぜ思考整理が重要なのかを見ていきましょう。
なぜ起業家は落ち込みやすいのか？よくある3つの原因
1つ目は「結果が出ない不安」。
2つ目は「他人との比較」。
3つ目は「誰にも相談できない孤独」。
たとえば、Aさんはフリーランスとして独立した直後、SNSで活躍している同業者を見て焦りを感じ、自分には才能がないのではと落ち込んでしまいました。
起業は自己責任の世界。評価されるのも、されないのも自分次第。だからこそ、些細なきっかけで心が揺らぎやすいのです。
「落ち込むのは、真剣に取り組んでいる証拠です。気にするな、ではなく“受け止めて、整える”ことが大切なんです。」
「感情」と「思考」が絡まると、行動できなくなる
落ち込みは感情の問題ですが、感情が思考を曇らせ、判断ミスにつながります。
たとえば「お金が減ってきた…」という不安から、「もっと営業しなきゃ」と焦って見境なくアプローチしてしまう。結果、相手に引かれてさらに落ち込む――そんな悪循環に陥る人もいます。
感情が強いほど、思考は混乱します。だからこそ「感情は感情、思考は思考」と切り分けることが必要です。
「心がザワついたときほど、一度ノートに書いてみましょう。頭の中が“見える化”されるだけで、冷静さが戻ってきます。」
整理されない思考が判断ミス・焦りを招くリスク
落ち込みを放置すると、判断がブレやすくなります。
たとえば、Cさんは契約交渉で弱気になってしまい、必要以上に値下げに応じてしまいました。「自信がないから断られたくなかった」という気持ちが冷静な判断を奪ってしまったのです。
思考の整理ができていれば、「なぜこの価格なのか」「譲れるポイントはどこか」といった論理が立ち、自信を持って交渉できたはずです。
「ノート1冊」でできる思考整理の基本ステップ
ノートを使った思考整理は、単なるメモではありません。それは「自分の物語を書き換える力」でもあります。心理カウンセリングの分野では「ナラティブアプローチ」という考え方があり、自分の経験を「どんな物語として語るか」が、行動や感情に大きな影響を与えるとされています。
落ち込みは、心の中で「私はダメだ」「また失敗した」という“ネガティブな語り”が支配的になっている状態です。ノートに書くことで、その語りを「挑戦の途中なんだ」「今は充電期間かも」といった別の見方に変えることができます。
これは「レジリエンス（折れない力）」を育むうえでも非常に効果的です。レジリエンスが高い人は、逆境の中でも「これは何を教えてくれているのか？」と問い直し、自分なりの意味づけをしながら回復していきます。
ノートはその“問い直し”の場になります。
そしてもう一つの大きな効果が「メタ認知（＝自分の思考や感情を客観的に捉える力）」です。ノートに書くことで、頭の中のグルグルした考えを一度外に出すことができ、自分の状態を冷静に観察できるようになります。
たとえば、「なんでこんなに焦っているのか？」と書いてみると、実は「他人と比較していた」と気づいたり、「準備不足が心配だった」など具体的な理由が浮かび上がってきます。
この“気づいている自分”の視点が、感情の渦から抜け出し、落ち着いて行動するための土台になります。
書くだけで効果あり？「ジャーナリング」とは
「ジャーナリング」に加えて、簡単かつ継続しやすい方法として「3行日記」という手法があります。これは、毎日たった3つのことを書くことで感情や行動を整理し、ポジティブな視点を育てる実践的な方法です。
📝 3行日記の基本フォーマット
- 今日うれしかったこと（ポジティブな気づき）
- 今日の反省点・モヤモヤ（正直な感情）
- 明日やってみたいこと・改善点（小さな行動）
たとえば：
- 1行目：「クライアントから感謝のメッセージをもらえた」
- 2行目：「集中できず作業が進まなかった」
- 3行目：「午前中に集中タイムをつくってみる」
このように、良かったことだけでなく“ネガティブな気づき”や“次の行動”もセットで書くことで、感情の流れが整理され、前向きな再スタートが切りやすくなります。
「今日は何もなかったな…」という日でも、1つでも小さなことに目を向けてみる習慣が、自己肯定感を支えてくれます。
ひいろのコメント：
「“自分の機嫌を取る日記”だと思って気軽に続けてみてください。たった3行なのに、思考と感情のバランスが整ってきますよ。」
「落ち込んだときに何を書けばいいのか分からない」という方のために、思考整理を深めるための効果的な問いをいくつかご紹介します。ノートに書くときは、以下のような質問を自分に投げかけてみてください：
「落ち込んだときに何を書けばいいのか分からない」という方のために、思考整理を深めるための効果的な問いをいくつかご紹介します。ノートに書くときは、以下のような質問を自分に投げかけてみてください：
- 何があったのか？（事実）
- それについて、どう感じたのか？（感情）
- なぜそれがこんなにも自分に影響を与えているのか？（価値観や期待）
- これまでにも似た気持ちになったことはあった？（過去との関連）
- 他の人ならどう感じるだろう？（視点の転換）
- 自分が親友に同じ相談をされたら、どう答える？（自己共感）
- 今の自分にできることは？（行動）
これらの問いに沿って自由に書くことで、頭と心の中が自然と整理され、気づきや行動のヒントが浮かびやすくなります。
「ジャーナリング」は、思っていることをそのままノートに書き出すだけのシンプルな方法。心理学でも効果が実証されているメンタルケアの手法です。
やり方は簡単。朝起きたときや寝る前に、5〜10分だけでも、頭の中の言葉をどんどん書き出していきます。
・今日感じたこと
・モヤモヤしている理由
・やりたいけど進んでいないこと
こうした内容を“誰にも見せない手紙”のように書いていくことで、気づきが得られます。
「“何を書けばいいか分からない”という方は、『なんでこんなに落ち込んでるの？』と自分に質問してみてください。それだけでペンが動き始めますよ。
その上で『他人ならどうするだろう？』『これが友人の相談だったら、私ならなんて言う？』など、自分を外の視点から見る質問も効果的です。」
思考整理ノートの3ステップ｜モヤモヤ→見える化→対処
- モヤモヤを吐き出す
- 分類して整理する（事実・感情・思い込み）
- 「今できること」を書き出す
たとえば「契約が取れなかった」と落ち込んでいるとき。
- 事実：商談で断られた
- 感情：自分が否定された気がする
- 思い込み：自分には営業センスがない
こうした分解をすると、「それって本当？」「じゃあ、何ができる？」と次の行動が見えてきます。
「“思い込み”が一番の厄介者。でも、書き出してみると『あれ？これって勘違いかも』と気づけるんです。」
感情を否定しない書き方のコツと注意点
思考整理ノートでは、“ネガティブな感情”を書いてもOK。むしろ、押し込めようとすると余計に苦しくなります。
ただし注意点がひとつ。感情を否定しない代わりに、“感情に飲み込まれない”ように意識すること。
「そう感じたんだな」と受け止めて、「じゃあ、どうしたい？」と少しずつ自分に問いかけてみましょう。
「感情は悪者じゃない。むしろ“次の行動”のヒントなんです。」
ノート思考整理を実務・経営に活かすヒント
思考の整理は、感情面だけでなく経営判断にも大きな影響を与えます。ノートはビジネスツールとしても非常に有効です。
思考の棚卸しで「次の一手」が見えるようになる
頭の中だけで考えていると、どれが「やるべきこと」で、どれが「不安な妄想」なのかが混ざってしまいます。
ノートに書き出すことで、
- 優先順位の整理
- 目標と現状のギャップの可視化
- すぐやるべきことの明確化
が可能になります。
たとえば、Bさんは売上が伸び悩んでいたときに、1週間の行動をすべてノートに書き出しました。結果、「SNSの投稿ばかりで、営業活動が不足していた」と気づき、改善につながりました。
あなたはこの1週間、どんなことに時間を使いましたか？
「何にエネルギーを使っているのか」「何が優先されているのか」を可視化することで、新しい気づきが得られるかもしれません。
「“考えていたつもり”が実は“ただ悩んでいただけ”ってこと、よくあるんです。」
意思決定や対人関係の整理にも役立つ
ノートは「自分との対話」だけでなく、「他人との関係」も整理してくれます。
- 言われてモヤモヤした言葉
- 自分の反応
- 本当はどう思っていたのか
これらを書き出すことで、感情的な対立を避けたり、冷静に対応できるようになります。
また、従業員やパートナーとのコミュニケーション改善にも活用できます。
設立直後に陥りがちなメンタルブレを回避する方法
会社設立直後は、やることも多く、不確定要素に囲まれて不安が大きくなりがちです。
この時期にこそ、「書いて整理する習慣」が大切です。
起業直後のよくある誤解や混乱は、以下のようなものでしょう：
- 自分だけがこんなに不安なのでは？
- もっと準備してから起業すべきだった？
しかし、ほとんどの起業家が通る道です。ノートで自分の思考を整理し、「一歩ずつ進めばいい」と確認することで、気持ちがラクになります。
まとめ｜起業家の心はノートで整えられる
起業家にとって「落ち込むこと」は避けられません。大切なのは、その感情に飲まれるのではなく、自分自身との対話によって立て直す力を育てることです。
ノート1冊あれば、
- 感情を受け止める場ができ、
- 思考のクセに気づき、
- 行動へ向かう選択肢が見えてくる。
それは、まるで“思考と感情の避難所”のような存在。毎日少しずつ書くことが、自分との信頼関係を取り戻す一歩になります。
落ち込むのは、ダメだからではなく、「真剣に向き合っているから」こそ。その証を、ノートという形で丁寧に残していきましょう。
どんな高性能なアプリよりも、手書きのノートには“自分の声と再会する力”があります。まるで、忘れていた自分の本音がページのすみに座って待っていてくれるような――そんな感覚です。ぜひ今日から、小さなノートを1冊、カバンに入れてみてください。
「ノートは“あなた専用のカウンセラー”。書くだけで、心の奥の声が聞こえてくるようになりますよ。」
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