起業時の資本金というと、現金で用意するイメージが強いですが、実は「モノ」で出資することもできます。これを「現物出資」と言います。たとえば、パソコンや車、土地、機械など、事業に使う資産を会社に出資して資本金にする方法です。会社法では現物出資も現金と同じように扱うことができますが、いくつかのルールと注意点があります。この記事では、そんな現物出資の基本と、実際に行うときのポイントをわかりやすく解説していきます。
現物出資とは?資本金にモノを入れる仕組みを理解しよう
現物出資の定義とできるもの・できないものの違い
現物出資とは、現金以外の財産を出資して会社の資本金に組み入れることを言います。できるものの代表例は、パソコンや車、不動産、工具、ソフトウェアの利用権など「評価可能な財産」です。
一方で、労働力やアイディア、信用といった、数値化や客観的な評価ができないものは現物出資には使えません。
たとえば、「起業に協力するから」という口約束だけで資本金にできないのはこのためです。
また、注意が必要なのが「ライセンス資産」や「知的財産権」です。たとえば市販ソフトウェアや音楽データなどは、購入したとしても使用権に過ぎず、商用利用や譲渡が制限されていることがあります。こうした資産は、出資に使えない場合があるため契約内容を必ず確認しましょう。
ひいろのコメント:車やパソコンは使えるけど、友達の応援や自分の気合は現物出資にカウントできません(笑)あと、買ったソフトも“会社で使える”とは限らないから、ライセンス契約もよく見てね!
パソコンや車は現物出資できる?具体例で解説
例えば、創業時に自分の使っていたノートパソコン(10万円相当)を現物出資し、それを資本金にすることが可能です。会社で仕事用にそのパソコンを使う前提があれば、定款や登記申請書に明記し、資本金に組み入れることができます。
ただし、10万円で買ったものでも中古の場合は市場価格が5万円程度まで下がっていることもあるので、正確な評価が必要です。
車の場合も同様です。ナンバープレートがついているものは所有者変更(名義変更)の手続きが必要になります。さらに重要なのは、ローンが残っている車やリース契約中の車両は、所有権が本人にないため、現物出資の対象にはできないという点です。
このような資産は、ローンを完済して所有権を移転した後でなければ出資できません。出資前には「そのモノが本当に自分の名義かどうか」をしっかり確認しておくことが大切です。
ひいろのコメント:モノの金額は”買った時の値段”じゃなくて”今の市場価値”で判断するのがポイントです。あと、ローン中の車は出資できないから気をつけてね。所有権って意外と盲点!
現物出資は誰がどのように評価するの?評価ルールを知ろう
現物出資の評価方法には、「発起人の評価」と「裁判所の選任する検査役の評価」の2つのパターンがあります。
通常は発起人(設立メンバー)が自分で価値を決めて記載することが多いですが、出資する物の価額が500万円を超える場合や、不動産などの重要資産がある場合は、裁判所に検査役をお願いしないといけないケースがあります(会社法第33条)。
ひいろのコメント:500万円以上の価値があるものを出資する場合は、”お墨付き”をもらう必要があるってこと。トラブル防止のためですね。
ひいろのコメント:現物出資は“モノで始める起業”の第一歩。焦らず、確実に準備して進めていきましょう!
現物出資に必要な手続きと証明書類のポイント
現物出資をする場合、現金出資と比べて少し手続きが増えます。特に注意が必要なのは、「定款への記載」と「資産評価に関する証明書類の整備」です。ここでは実際のフローや書類について、初心者の方でも理解しやすく解説していきます。
定款への記載と検査役の選任が必要なケース
現物出資を行う際には、その内容を必ず定款に記載しなければなりません。記載内容としては、
- 出資する財産の内容(例:車、パソコン)
- その評価額
- 出資者の氏名
などが必要になります。
そして、前述の通り500万円を超える価値の資産を出資する場合は、裁判所が選任する検査役によるチェックが必要です。この手続きには時間も費用もかかるため、創業時は避ける起業家が多いのも事実です。
ひいろのコメント:定款に記載するのを忘れると、後から「資本金に入ってません」ってことになります。忘れずに司法書士と相談してね!
資本金への計上方法と証明書類の整え方(証明・検査・査定)
現物出資を資本金にするためには、証明できる書類をしっかり整える必要があります。たとえば、
- 購入時の領収書や請求書
- 中古市場での価格査定(インターネットの相場でもOK)
- 資産の写真やシリアルナンバー
などをそろえると安心です。あいまいな記載では登記が通らない場合もあるので、可能な限り「誰が見ても納得できる」ように準備しましょう。
ひいろのコメント:ネットで中古の相場を調べて印刷しておくのもアリ!証明できる材料は多いに越したことはありません。
登記手続きで司法書士が確認する現物出資の注意点
現物出資を行う際の登記申請には、通常の設立書類に加えて、次のような添付書類が必要になります:
- 財産の内容や評価額を記載した「財産引継書」
- 出資者から会社への譲渡を証明する「譲渡証明書」や「財産給付証明書」
- 財産の評価に関する資料(市場価格のスクリーンショット、査定書など)
これらは、法務局が出資の適正性や評価額の妥当性を確認するために重要な書類です。書類に不備があると登記が却下されるおそれがあるため、事前に司法書士としっかり打ち合わせを行うことが必要です。
ひいろのコメント:書類の名前はちょっと堅苦しいけど、「このモノをこの金額で会社に渡しました」って内容を証明するものなんだよ!
司法書士は、現物出資の登記を行う際に、
- 定款への記載内容
- 証明書類の妥当性
- 評価額の合理性
などを確認します。特に根拠が弱い場合や書類が不十分な場合は、登記申請が通らないリスクもあります。
また、名義変更が必要な資産(車、不動産など)の場合は、別途の手続きが発生するため、必ず早めに相談するようにしましょう。
ひいろのコメント:最初から司法書士に相談しておくと安心。書類不備でやり直し…なんてことは避けたいですよね。
現物出資における税務・労務の落とし穴と注意点
現物出資は資本金として扱える便利な手段ですが、税務や労務の面で注意すべき点もあります。ここでは特に見落とされがちなポイントをまとめて解説します。
現物出資と税務上の評価額|法人税・消費税への影響は?
現物出資をすると、その資産は法人の資産になります。注意したいのは、資産の評価額が法人税や消費税の課税対象になる場合がある点です。
たとえば、課税事業者が新品のパソコンを出資した場合、消費税の取り扱いが問題になります。また、時価評価で大きな差額が出たときに、贈与とみなされるリスクもあるため、税理士に相談するのが安心です。
ひいろのコメント:現物出資は税金まわりが地味にややこしい!「あとから課税された」なんてことがないよう、事前に相談を。
現物出資にした資産の減価償却と帳簿処理の考え方
出資したパソコンや車は、法人の「固定資産」として帳簿に記載し、減価償却をしていきます。つまり、時間とともに価値が減っていく資産として会計処理する必要があるということです。
たとえば10万円で出資したパソコンなら、法定耐用年数に応じて数年かけて費用計上することになります。
ひいろのコメント:法人になると、買ったパソコンも“使って減っていく資産”。この感覚、最初はちょっと不思議かも?
労務関連の注意点|現物出資に従業員私物を使うのはOK?
「社員が自分の車を使うから、それを現物出資にしたい」などの相談もありますが、原則として、出資は発起人(株主)によるものであり、従業員が出資する場合は株主として扱われます。
そのため、社員の私物を会社の資本金としてカウントする場合には、持ち主との間で契約や譲渡が必要です。
ひいろのコメント:「社員のモノ=会社のモノ」にはなりません!しっかりと手続きと名義の確認をしておきましょう。
まとめ|現物出資は計画的に、安全に進めよう
現物出資は、現金を用意できない起業家にとって大きな味方になります。ですが、その分だけ手続きや評価、書類準備、税務・労務などに注意すべき点も多くあります。
- 出資できる「モノ」の範囲を理解する
- 市場価値での適切な評価を行う
- 定款や登記で必要な記載・手続きを漏らさない
- 税金や会計処理の視点も忘れない
このように多角的に準備を進めることが成功のカギです。
会社設立をスムーズに進めるためにも、専門家(司法書士・税理士など)に相談しながら進めることをおすすめします。
詳細は法務省の公式ページをご確認ください(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)
ひいろのコメント:現物出資は“モノで始める起業”の第一歩。焦らず、確実に準備して進めていきましょう!
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