会社設立の際に必ず通るステップの一つが「資本金の払込」です。この手続きを正確に行わないと、登記申請が受理されず、希望した日に設立登記ができないといった事態になりかねません。さらに、仮に希望日で登記ができたとしても、登記完了が遅れて登記簿謄本などの取得に影響が出るケースもあります。
この記事では、司法書士として多くの会社設立に携わってきた立場から、資本金の払込にまつわる正しい手順と注意点をわかりやすく解説します。特に、設立が初めての方が戸惑いやすい「通帳コピーの準備方法」や「払込証明書の書き方」「ネット銀行・ゆうちょ銀行を使う際の注意点」など、痒いところに手が届く情報をお届けします。
資本金の払込に必要な準備と前提知識
資本金の払込とは?その意味とタイミング
「資本金の払込」とは、出資者が定款認証後、会社設立登記の前に資本金を一度銀行口座に入金する手続きのことを指します。

「え?個人口座でいいの?」と驚かれる方も多いですが、登記前の時点では会社名義の口座はまだ作れないんです。
このステップは、単なるお金のやりとりではなく、法律上の『出資の履行』にあたり、登記の際にその証明が必要になります。
この払込は、必ず定款認証後に行う必要があります。定款認証前に資本金を振り込んでしまうと、その証明が無効とされる恐れがありますので、タイミングは非常に重要です。
どんな銀行口座を使えばいい?~資本金の振込・入金先の基本
資本金を振込むための口座は、基本的に発起人(設立時の出資者)個人名義の銀行口座を使用します。まだ法人の口座は存在しないため、「会社の口座に振り込む」という選択肢はありません。



「ネット銀行って使えるの?」という質問も多いですが、通帳がない場合の代替資料さえ整えば利用できます!
利用できる主な銀行口座の種類は以下の通りです:
- 一般の都市銀行や地方銀行(※紙の通帳がない場合も増えています)
- ゆうちょ銀行(同様に通帳の発行がないケースあり)
- ネット銀行(楽天銀行、住信SBIネット銀行など)
※以前は紙の通帳が当たり前でしたが、近年は「通帳レス」が選べる銀行も多くなってきました。必ず利用予定の口座が証明資料を発行できるかどうかを事前に確認しておきましょう。
口座名義は誰にすべき?注意すべきポイント
「資本金 口座」に関して最も注意が必要なのが名義です。必ず発起人の名義であることが求められます。
たとえば、ある方が「親の口座を使えば大丈夫だろう」と思い込んで振込んでしまい、登記時に証明書類として認められず、設立が大幅に遅れた事例もあります。口座は必ず「発起人本人」のものを使用してください。
発起人が複数いる場合は、代表発起人1名の口座で一括して払込む形でも問題ありませんが、その場合は各出資者の払込を正しく記録し、証明できるようにしましょう。
払込手続きの具体的な流れと書類準備
資本金の通帳コピーの取り方とポイント
資本金の払込を証明するためには、「資本金 通帳コピー」が必要です。以下の3つのページを必ずコピーしてください:
- 通帳の表紙(銀行名が記載されたもの)
- 通帳の1・2ページ(口座名義・口座番号がわかるページ)
- 資本金の振込(入金)が確認できるページ



ネット通帳やアプリ明細の場合、口座番号・名義・銀行名・取引履歴がそれぞれ別ページに表示されているケースもあります。それぞれの画面をスクリーンショットして、必要情報をすべて印刷して添付しましょう。
また、法務局によっては「入金か出金かがわからない」画面は不可とされることがあります。数字だけでなく「入金明細」などの表示があるか、必ず確認してください。
払込証明書の作り方と注意点
「資本金 払込証明書」の記載例は、法務局の「株式会社設立登記申請書類の様式例」でも確認できます。実際に使用する際は、最新の様式にご注意ください。
「資本金 払込証明書」とは、資本金の払込を確かに実施したことを代表者が証明する書面です。この書面は設立登記に添付します。
記載すべき主な項目は以下の通りです:
- 払込金額
- 払込日
- 払込先の銀行名、口座番号、口座名義
- 発起人全員の氏名(または代表発起人)
- 払込を確認した旨の文言
証明書には代表者の記名押印が必要です。テンプレートは法務局のサイトや、司法書士事務所のHPなどでも無料公開されています。
振込記録の確認と補足書類の整え方
資本金の入金は、必ず発起人本人名義から行うようにしてください。銀行によっては送金者名が省略されたり、「振込」とだけ記載されることがあります。その場合、送金元の明細も印刷するなどして補足資料を整えておくと安心です。
よくあるトラブルとその対処法
通帳がない!どうすればいい?(ネット銀行・ゆうちょ銀行等の注意点)
ネット銀行やゆうちょ銀行、または通帳レス口座では、紙の通帳が発行されないことがあります。この場合は、取引明細をPDFなどで出力・印刷し、次の情報が明示されているかを確認してください:
- 銀行名・ロゴ
- 口座名義(カタカナ含む)
- 入金日時
- 入金金額
取引履歴と名義や口座番号が別ページにあることも多いです。それぞれスクリーンショットし、まとめて印刷しましょう。また、入金なのか出金なのか判別できない画面は避け、明確に「入金」と記載されているものを選びましょう。
口座名義が本人以外だった…この場合の対応は?
誤って親や配偶者名義の口座を使って払込をしてしまった場合、原則として登記は受理されません。資本金はあくまでも「発起人本人の出資」であることが条件です。
このようなミスをした場合は、再度正しい口座から払込を行い、証明資料も一から取り直す必要があります。登記を急ぐ場合は司法書士に相談することをおすすめします。
その他、資本金払込で起きがちなミス
- 定款認証前に資本金を振り込んでしまった
- 通帳のコピーが不足していた(見開き1ページ目の抜けなど)
- 払込証明書に記載ミスがあった
- 発起人が複数いるのに払込証明が代表者のみになっていた



これらのミスは、登記不受理や再申請の原因になります。面倒でも、提出書類は一つずつ確認しましょう!
まとめ|資本金の払込は慎重に。成功のカギは「正確な手順と証明書類」
資本金の払込は、会社設立の大事な起点となるステップです。ちょっとしたミスが大きな手戻りや登記不受理につながるため、事前に必要書類を整え、タイミングを守って手続きを進めましょう。
ネット銀行や通帳レス口座の利用も可能ですが、証明書類の準備には一工夫が必要です。設立に不安がある方は、司法書士など専門家のサポートを活用するのも一つの手です。



「設立って難しそう…」と思われるかもしれませんが、手順さえ押さえれば大丈夫!この記事が、あなたの第一歩の後押しになれば嬉しいです。
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