会社を立ち上げる予定のある人であれば会社設立日をいつにするのかは大きなテーマではないでしょうか。「誰かの誕生日?」「何かの思い出の日?」占いやスピリチュアルなことを信じている人なら縁起の良い日だって気になりますよね。また、創業当初の気持ちに毎年一回は立ち返れるわけなので、会社を立ち上げた時の想い・動機・やる気・感動、それら全てが会社設立日に詰まっていると言っても過言ではないと思います。
実はそれだけでなく、会社の手続きや運用の面、強いては税金に関する部分まで、会社設立日をいつにするかで与える影響はたくさんあるんですよね。そこで今回はこうした会社設立日はいつがいいのか、について考えていきたいと思います。
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◆まずは会社設立することの意味について考えてみましょう
(1)会社とは、組織を人のように扱うこと
まず、会社設立日について考える前に、会社を作るということがどんなことを意味するのか、というところから考えるとわかりやすいと思います。会社がなぜ、存在するのかというと世の中で物事を進めやすくするためなんですね。会社のことを法人と言ったりしますが、これは会社という組織を法律によって人と同じようにみなしますよ、ということなんです。
(2)会社を人とみなすことで色々なことが便利になります
会社という組織が人であることによって、ものごとがスムーズに進んでいきます。たとえば会社がどこかと取引する時に、個人対個人なら誰と取引するかが明確です。明確だと何がいいかというと責任の所在がはっきりするんですね。私が佐藤さんとペンを買った場合は、私と佐藤さんとの間での出来事です。ペンが書けないなどのクレームは佐藤さんに言えばよくて、佐藤さんに何らかの対処をしてもらえばいいわけです。
会社だと色んな人がそこにいて、誰と取引するのかがわかりにくいです。わかりにくいので、責任の所在だって明確じゃありません。株式会社Aというところの窓口担当の鈴木さんとパソコンを買う契約をして、取り付けにはその会社の田中さんが来てくれて、その後のアフターフォローは木村さんが対応してくれた・・・みたいな感じで登場人物がたくさん出てきて、じゃあ何か問題が起きたときに誰が責任とるの?と困ってしまいます。極端なことを言ってしまうとこんなわけなんです。
そこで、会社そのものを人とみなして対会社として取り引きをすることで責任の所在もはっきりし、ものごとがスムーズに進むようになります。法律を適用するにしても会社をまるで人のように扱えるので色々と便利なんですよね。
(3)会社をつくるとういうことは、手続きなんです
そして、この会社をつくるということは、あくまでも手続きなんです。どんな会社にするかを色々と決めて書類をつくり、そして法務局という場所で手続きをして登録をしてもらうんですね。この一連の手続きを登記と言い、登記をすることで、会社がこの世に存在する証明となるわけです。すると会社設立日というのは登記をした日となるわけです。
◆会社設立日に関する基本事項を整理
だんだんと会社設立日の全貌が見えてきました。ここでは会社設立日も含めて基本事項の整理をなるだけわかりやすく見ていきましょう。
会社設立日っていつなんでしょうか?
・人間の存在を証明することも手続きなんです!
私たち人間もこの世に生を受けたら出生届を出して戸籍というもの登録します。そうすることによって戸籍謄本というもので、自分という存在が証明されるわけです。会社設立もそれと一緒ですね。私たちは生まれた日のことを誕生日と言いますが、会社が生まれた日のことを「設立日」と表現しているだけなんです。
・会社の誕生日(会社設立日)は会社設立の手続きをした日です
会社を設立するということも手続きなわけですから、書類を作って法務局に提出して受け取られるという流れになります。そしてこの会社設立の手続きをした日が会社設立日となります。つまり法務局に会社設立の書類を受け取ってもらった日が会社設立日となるのです。法務局に直接書類を届ける方法と、インターネットを利用してオンライン申請をする方法があるんですけど、オンライン申請の手続きをした日が会社設立日となります。
会社設立日をいつにするか気をつけたいポイント
・休日を会社設立日にすることは出来ません・・・
会社設立日とは法務局に設立書類を受け取ってもらった日なのですから、法務局がお休みの日は、書類を受け取ってもらうことが出来ません。残念ながら土日祝日・年末年始は法務局が営業をしていないので会社設立日にすることができないのです。
こちらの休日を会社設立日にすることはできますか?の記事でも詳しくまとめていますが「ゾロ目だから11月1日を会社設立日にしたい!」とか「彼女の誕生日が12月8日だから会社設立日を同じ日にしたい」とか、もちろん大歓迎なのですが、その日がお休みの日だと残念ながら会社設立日にすることができないのです。オンライン申請も法務局で受け付ける時間帯と日時が決まっていて、やはり残念ながら休日は申請することができません。ちなみに、オンライン申請の平日受付時間は8時半から21時までとなっています。
・法務局に書類を郵送する時は到着日にご注意
書類を直接、法務局に持っていく場合にはそんなにトラブルはないのですが、郵送で設立書類を送るときには注意をしてくださいね。郵送であれば、その書類が届いた日が会社設立日になるわなので、ちゃんと希望の日に到着するように準備をしましょう。
また、これが届くのに何かの手違いや、事故で2日後や3日後に届いたなんてことになったら希望の日を会社設立日にすることが出来ないケースもあるかもしれないですよね。だからこそ、郵送で会社設立書類を送る時にはしっかりと後から追いかけて到着確認できる郵送方法を選択してください。宅急便やレターパックなんかはネット上から調べることが出来ますので便利です。
◆会社設立日と似たことばを整理しておきましょう
ここで、会社設立日と似ている言葉がいくつかありますので、そこら辺を整理しておきたいと思います。ふだん何気なく使っているので、意識していませんがこれを機に創業日、開業日、登記完了日などを振り返りましょう。
創業日っていつ?
まず、「創業日」についてです。「創業日」とは読んで字の如く・・・事業を創った日。つまり事業を始めた日ですね。もっと言うのであれば、物やサービスを提供してお金のやりとりが発生した日とでも言うのでしょうか。例えば日本には歴史のある企業がたくさんありますが、和菓子屋さんがあったとして、そこが創業100年であれば和菓子を作って売り始めてから100年が経ちましたよ、ということです。起業した日とほとんど意味は一緒ですね。
開業日っていつ?
「開業日」とはいつのことなんでしょうか。イメージとしては個人事業主が正式に事業を始めた日を指します。そう考えると、創業と意味合いは近いかもしれませんね。個人事業主は町の魚屋さんとか、商店街の個人店のような自営業者をイメージしてもらえると良いかと思います。個人事業主になろうと思うと、税務署へ開業届という書類を出すことになります。これは、「私はこれから事業をスタートします」と届け出る書類なのですが、この書類の中に「いつを開業日にするのか」を書く項目があります。
登記完了日っていつ?
「登記完了日」がいつかというと、登記の完了した日のことです。会社設立日とゴチャゴチャになりやすいのですが、会社を設立した日が会社設立日、登記の完了した日が登記完了日です。会社を設立すると、私たちでいう戸籍謄本の会社バージョンである「登記簿謄本」を取得できます。この登記簿謄本こそが会社がこの世に存在する証明書になりますので、会社の銀行口座を作ったり、不動産契約をしたり、社会保険に入ったりするときに使うのです。この登記簿謄本を取得できるようになったタイミングが登記完了日なのです。会社設立日の約一週間後ぐらいに登記が完了するので、その日が登記完了日となります。法務局に会社設立書類を提出すると同時に、登記完了予定日を教えてくれます。予定日は法務局のホームページでも確認が出来るので、そこから見るようにしましょう。
◆会社設立日をいつにしたらいいのか「良い日」について
ここまでの説明で、会社設立日をいつにしたら良いのか、最低限の手続きに関するルールはイメージできたと思います。次に会社設立日にすると良い日なんていうのはあるのでしょうか。なんとなく、「大安」は良さそうだなというイメージはありますよね。当然、会社設立日にとっていつが良い日かと聞かれれば大安となるのですが、「そもそもなぜ大安が会社設立日に良いのか」「他にも会社設立日に適した日はないのか」という点を調べてみました。
六曜にみる会社設立日に良き日
調べてみると大安や仏滅とかを六曜という言い、ウィキペディアによると一ヶ月(30日)を6日ずつにわけ、その日の良い悪いを占ったようです。①先勝②友引③先負④仏滅⑤大安⑥赤口とあり、それぞれに意味がありました。できる限り会社設立日にはいつがいいのかという視点で説明できればと思います。
1、先勝
「せんしょう」や「さきがち」と読み、先んずれば勝ちということらしいです。1日の中で早いタイミングである午前中は吉で、午後は凶とも言われています。急ぐものや、訴訟の開始日、契約締結日としては良い日とされているようです。早いタイミングで、かつ急ぎの案件であればありなのかもしれませんね。
2、友引
「ともびき」と読み、友を引くと書きます。一般的に凶事に友を巻き込むこととされ、悪いこと(お葬式)などは避けた方がいい日と言われています。会社設立日がいつがいいか相談された時にはオススメできない日かなと思います。
3、先負
「せんぷ」や「さきまけ」と読み、先んずれば負けということになるので、先勝とは逆の意味になりますね。焦らず落ち着いていることが良いということで、勝負ごと急な用事は避けた方がいいらしいです。あまり会社設立日には適していないかもしれませんね。
4、仏滅
六曜の中でも最も悪い日とされていて、何かをスタートするには良い日という説もあるようですが、イメージの問題などもあるので(なんせ仏が滅するですからね)、これは会社設立日はいつがいいだろうという疑問を挟む余地なく、選ぶのは避けた方が良いでしょう。
5、大安
「大いに安し」ということで、六曜の中でも一番良い日とされているのがこの大安です。この大安が何かを始めるには良い日というのは周知の事実かもしれません。もちろん、会社設立日を大安にするのは縁起が良いということになりますよね。
6、赤口
「しゃこう」とか「しゃっく」「せきぐち」と読むらしいです。正午が良い時間帯と言われているらしいです。永く発展する企業は赤口の会社設立日が多いということらしいですが、真意のほどはわかりません。
天赦日と一粒万倍日というが会社設立日には良い日
会社設立日と暦について調べていたら、もの凄い日が二つあることを知りました。それが、「天赦日」と「一粒万倍日」というものです。会社設立日として、いつにするのが良いのか聞かれたら、この二つのうちのどれかにした方がいいかもしれませんね。
・天赦日
「てんしゃにち」や「てんしゃび」と読むようです。日本の暦の中では最も良い日とされているようです。それならば、この日を是非会社設立日に!と思うのですが、年に5〜6回ぐらいしか訪れない貴重な日らしいのです。年によってこの天赦日は違うらしいので、その年はいつになるのかはインターネットでお調べ下さい。もし、タイミングがあえば是非検討してみてください!
・一粒万倍日
「いちりゅうまんばいび」と読むようです。どうも大安と並ぶぐらいの良い日。一粒のもみが何万倍もの稲穂をつけることを意味し、新しいことをスタートするにはもってこいの日ということでした。こちらも年に7〜8日ぐらいしかない貴重な日ですので、是非お調べ下さい。大安や仏滅という話から最後には、初めて聞くような一粒万倍日や天赦日というような日にまで話が広がりましたが、会社設立日は暦だけではなく、取引先との関係など色んな要素がからみあってきますので、優先順位は状況によってさまざまです。
会社設立日と縁起の良い日については「大安よりも縁起の良い会社設立日を調べてみました」の記事の中で詳しく紹介しています。
◆会社設立日にまつわる税金のお話
会社設立日は毎月1日を避けた方が税金がおトク
まず知っておいていただきたい事は、いつ設立しようと、会社が存在するだけで必ず支払わなければならない税金があります。それが法人住民税と呼ばれるものです。こちらは業績が赤字だっとしても支払わなければいけないものなのです。
私たちで言うところの住民税のようなものですね。会社という組織も法律の考え方では人として扱うわけです(法人)。それに対して住民税を課しましょうというのが、法人住民税なわけですね。少し乱暴な説明ですが、イメージするとしたらこんな感じなわけです。そして、なぜ毎月1日を避けると税金がお得になるのかというと、この法人住民税の計算の仕方に秘密があります。
会社設立日が1日でなければ、その月がカウントされないのです
・法人住民税は毎年最低でも7万円です
この法人住民税は最低でも年間で7万円なのですが、設立したばかりの会社がその年の法人住民税をいくら支払うのかは、7万円を12ヶ月で割って一ヶ月ごとに計算すると思って下さい。そうすると一ヶ月約5800円ほどになるのですが、その月に住民税が発生するかを計算するかどうかは毎月1日を起算日とします。つまり、その月が法人住民税の計算に当てはまる月かどうかは1日が含まれているかどうかで決まるのです。
・会社設立日を1日にしなければ約5,800円お得になる
例えば10月1日を会社設立日としたならば、1日が含まれているので法人住民税は10月を含めて計算します。しかし10月2日を会社設立日として設定すれば10月1日は含まれていないので、翌月の11月1日が起算日となりますので、法人住民税が1ヶ月分お得になるのです。
うーん書いていても説明が伝わっているかどうかが不安ですが、徐々に説明もブラッシュアップしていきますので、ここでは会社設立日を1日以外にすると1ヶ月分の法人住民税である約5800円がお得になるとだけ理解しておいて下さい。設立当初はなるべく無駄なコストは抑えたいものです。設立日を毎月1日を避けるだけで6000円弱のお金が無駄にならずに済むと思えば知っておいて損はないと思います。いつにしようか迷ったらこうした点も参考にしてみて下さい。
会社設立日がいつかによって、事業年度にも注意
そもそも事業年度ってどういう意味でしたっけ?
私たちが小学校に入学した時に4月から翌年3月を1年としていたように、会社も設立してから1年間(短い時もありますが)を1期目とするのです。この一年間の売上やら経費やらを計算して納める税金を出すわけですね。そして次の1年間である2期目が始まります。ですから、会社を設立して一期目、二期目というは一つの事業年度の塊を指すわけですね。
1000万円未満の資本金で会社設立をした場合、一期目と二期目の消費税を納めなくてよい特別ルールが適用されます
設立をすると最初の一期目・二期目は消費税の納税が免除となります。つまり消費税をお客様からもらったとしても、国に納める必要もなくそのまま売上に入れてしまっていいですよ!という特別ルールがあるのです。この特別ルールが適用されない場合もありますが、それを説明するとさらに長くなってしまうので、今回は省略させて頂きますね。ここで抑えておいて頂きたいのは資本金1000万円未満で会社を設立すると一期目と二期目の最高24ヶ月間が消費税を納めなくても良い特別ルールが適用されるということです。
ここで話をややこしくするのが、会社設立した一期目は一年以内であれば自由に事業年度を決めて大丈夫ってことです
たとえば10月1日を会社設立日にして、まるまる一年間(12ヶ月)を一期目として設定すると10月1日から翌年9月末までが一期目となり、9月決算の会社ができあがりました、ということになります。ほとんどの場合、まるまる一年間(12ヶ月)を一期目に設定するのですが、決算の月は忙しくなるので、繁忙期を避けようとしたり、決算の二ヶ月後に税金を納めるタイムリミットがあるので、なるべくお金がたくさんあるタイミングを逆算して決算月に設定したいという方が一期目の事業年度を一年以内で設定したりします。
そうすると、12月からの数ヶ月が比較的仕事に余裕が出てくる時期なのであれば、10月1日を会社設立日にし、最初の決算月を12月にします。すると12月決算の会社になりますので、仕事が暇なこの時期に税金の計算など雑務をするようにして、お金に余裕のあるタイミングに税金を支払うということも出来るのです。
つまり、一期目の期間を短くしてしまうと消費税を納めなくて良い特別ルールを適用される期間が短くなるということなんですね
ここで注意したいのが、上記のように10月1日に設立して12月末までを最初の事業年度に設定してしまうと、本来であれば一期目(12カ月)と二期目(12カ月)の合計24カ月が消費税を納めなくていい期間になるのですが、会社設立した一期目を何かの理由で3ヶ月として設定すると、一期目(3ヶ月)と二期目(12カ月)の15カ月しか消費税を納めなくてよい特別ルールの適用される期間が短くなってしまうのです。
こうしたメリット・デメリットをふまえて、会社設立日はいつがいいのか、と共に一期目の事業年度はどうするのかを決めて頂ければと思います。また事業年度は会社設立をした後に変更することもできます。会社設立がいつが良いか悩まれて、事業年度をやっぱり変える!という点にも対応できるので安心して下さい。これはまた別の機会に事業年度について詳しく説明するときに紹介しますね。
◆会社設立日はいつにするのがベストか調べてみました、のまとめ
いかがでしたでしょうか。会社設立日はいつがベストか決めようとすると、様々な観点でメリット・デメリットが出てきますよね。全ての良い部分を享受することは出来ないかもしれなく、優先順位をつけることが必要になるかもしれません。
そんな時は是非、「そもそもなぜ会社を立ち上げるのか」に立ち戻って下さい。自分の利益だけを優先していないか?会社を作ることで誰を喜ばしたいか?自分は何を大切にしていきたいか?など、様々な観点で質問を投げかけていくことで、さらに自分の創業の想いがより鮮明に形作られていくと思います。何より会社設立日がいつにするかが大切というよりも、その会社設立日をその日にして良かったと思えるように、この先の事業を全力で邁進するぐらいの気概で事業を進めていくのもまた面白いかと思います。
会社を設立した後、いつから営業を開始したらいいのか等結構わからない人も多いようですね。会社設立日と営業開始日の関係については「会社設立日と営業開始日の違いを理解する」という記事の中で詳しく紹介していますので参考にしていただければと思います。
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