会社設立時に必ず決めなきゃいけないのが「事業年度」と「決算月」。
設立時の事業年度と決算月は兄弟のような関係で、片方が決まれば、もう片方も決まります。
実は会社設立をするときの事業年度や決算月の決め方によって、税金が安くなるし、会社の運営がラクになります。
株式会社も合同会社も、この考え方は一緒です。
- 事業年度と決算月とは?
- 会社設立時の事業年度と決算月の決め方
この二つについて、なるべくわかりやすく整理していきます!
急いで会社設立しようと思ったら、事業年度なんてテキトーに決めちゃえってなりそう。。。
会社設立日が決まれば、ほとんどの会社が最初の事業年度を一年間に設定するんじゃ。
なかば自動的に決まりがちじゃが、税金でも運営コストでも良し悪しを、ちゃんと理解して決めるのが大事じゃよ。
◆事業年度とは?決算月との関係性や決算日との違い
(1)事業年度とは?
事業年度とは「会社の区切りとなる期間」のことです。
たとえば会社が税金を納めるには業績をまとめて、利益がどれぐらい出ているのかなどを計算しないといけません。
この区切りとなる期間のことを「事業年度」と読んでいるわけです。
(2)決算月(決算日)とは?
決算月とは事業年度の最後の月です。その決算月でも最後の日が決算日。
たとえば事業年度が4月から翌年3月末までの会社なら、決算月は3月です。事業年度が8月から翌年7月までの会社なら7月が決算月というわけです。
(3)事業年度や決算月(決算日)の基本ルール
事業年度や決算月にはルールがあります。そのルールの内側で効果的な事業年度や決算月を決めていくことになります。
1、事業年度の数え方
「あなたの会社何年目?」みたいな会話は、経営者であればよくある内容です。
普通なら1年目とか、2年目みたいな表現で間違っていないのですが、厳密に表現するなら「1期目」とか「2期目」というように表現した方が正確です。
会社設立した最初の事業年度から一期目として数えて、翌年から順番に二期目、三期目ってなるんだね。
そうじゃな、4月設立3月決算の会社なら、設立した4月から翌年3月までが一期目で、次の4月から二期目いなるって数え方じゃな。
休眠中の会社は期のカウントには入らない?
休眠中の会社は、いろいろ複雑じゃが、基本的に休眠中も対象の期は数えるんじゃよ。
2、事業年度の長さ
事業年度は基本的に1年間です。いわゆる12ヶ月ですね。
特に設立して最初の事業年度を、一年以上に設定しようとする人がいますけど一期目を13ヶ月にするとかは無理なので気をつけましょう。
逆に会社設立後の最初の事業年度を7ヶ月にするとかはOKです。
8ヶ月目からは二期目がスタートします。この場合は二期目以降の事業年度は一年間(12ヶ月)になるわけです。
当たり前の話なんですけど、会社設立後の事業年度は基本的に一年単位で数えていきます。
一年以下の期間になるのは、会社設立した初年度か、決算月を変更した年ぐらいです。
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しょっちゅう会社の業績を計算する尺度である事業年度の長さが変わったら、業績の変化を数字で正しく把握できないもんね。
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3、決算月と決算日の違いとは?
決算月は、事業年度の最後の月でした。ときどき決算日と言ったりしますが、これは事業年度でいう最後の日です。
そのまんまですね。事業年度は月ごとで区切ることが多いです。その方が売上や経費の管理がラクですもんね。
だけど時々、事業年度が細かい日で区切られていることがあります。
8月15日決算みたいな感じです。これだと事業年度は8月16日から翌年8月15日までとなるわけです。
こういう時は決算月と言うよりも、決算日8月15日という方が誤解を招かいで済みそうです。ほとんどないけど。
めちゃくちゃ細かい話なんですけど、事業年度は月で区切られることが多いので、最初の事業年度は数日間短いことが多い。
会社設立日が4月15日で、決算月が3月末だったら最初の事業年度は11ヶ月と15日しかありません。
一年以内でしか事業年度を設定できないことを考えると、このように最初の事業年度が数日短くなっちゃうことは仕方ないことなんですよね。
◆会社設立時の事業年度と決算月を決める時の6つのポイント
(1)消費税の免税期間が長くなるように事業年度と決算月(決算日)を決める
事業年度や決算月の工夫によって、税金が安くなる。正確には税金が安い期間を伸ばすことができるってわけです。
1、資本金1000万円未満の会社なら最初の事業年度は一年間が良い
実は資本金1000万円未満で会社設立をすると、最初の二期間は消費税を納めなくて良いという特別ルールが適用されます。
二年間ではなく、二期間ってのがポイントですね。
会社設立してから一期目の事業年度を短くしちゃうと、その分消費税を納めなくて良い期間が短くなっちゃうわけです。
だから1000万円未満で会社設立したときは、最初の事業年度は一年間(12ヶ月)が良いってことですね。
でも資本金を1000万円未満で会社設立しても、消費税が免除されないケースもあるので要注意です。
消費税を納めなくて良いルールを正しく適用するための詳しい内容
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2、最初の事業年度を7ヶ月に設定した方が良いことがある!
会社設立後の事業年度は12ヶ月(一年間)が良さげな話をしていたのに、スグ違うこと言うので混乱させてしまったらスミマセン!
もし会社設立する方で、次の二つの条件を満たす人がいたら要注意です。
- 設立してから半年の売上が1000万円を超える
- 設立してから半年の人件費(役員・従業員)の合計が1000万円を超える。
この両方を満たした場合は、二期目から消費税を納める立場になるわけです。
売上と人件費の両方が半年で1000万円を超えちゃダメってこと?
たとえば半年の売上が1000万円超えたけど、人件費が超えてなければ大丈夫?
両方が超えていなければ大丈夫じゃよ。
だから役員報酬を工夫して人件費が半年で1000万円を超えないように工夫している人が多いんじゃ。
なるほどね。でも、どうしても売上と人件費の両方が半年で1000万円超えちゃうって人がいるんじゃない?
どうしても半年の売上と役員報酬含めた人件費が、1000万円を超えてしまう場合は最初の事業年度を7ヶ月にしておくとセーフです。
細かく説明すると逆に混乱させてしまうのですが、最初の事業年度が7カ月未満の会社は、そもそも「半年の売上と人件費が1000万円を超えたら二期目から消費税を納める!」というルールの適用がないんです。
そのため「資本金1000万円未満で会社設立したら二期間は消費税免除!」のルールだけ適用されるわけです。
そっかぁ。7ヶ月にしておけば、一期目(7ヶ月)+二期目(12ヶ月)の合計19ヶ月が消費税を納めなくて良い期間になるわけなんだね。
二期間(24ヶ月)は適用できないけど、一期目だけの12ヶ月だけが消費税免除になるより、少しでも長い方が良いよね!っていう考え方じゃな。
最初の事業年度7ヶ月ルールについてもう少し深堀りしています。
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(2)事業年度の最初に繁忙期があると節税対策しやすい
繁忙期を事業年度のはじめにしておくと税金対策がしやすいです。
会社の未来を予測することは誰にも不可能です。
今年一年の売上は○○万円!といっても、すごい売上が増えるかもしれないし、めちゃくちゃ減る可能性だってあります。
ビジネスモデル的に、繁忙期がいつぐらいになるかわkる業界は、繁忙期を事業年度の最初に持ってくると良いわけです。
繁忙期=売上が増える。これがポイント。
・最初に売上や利益を出しておいた方が節税対策する期間に余裕がある
節税対策には余裕が必要。これに尽きます。あせってやることは大抵うまくいきません。
最初に売上をバンっと出しておいた方が利益に対して節税対策をするための期間を長く取れるからです。
逆に繁忙期が事業年度のお尻に来ると、後半戦で利益がたくさん出たしても節税する打ち手が限られてしまいます。
税金対策する期間を長めに取れる可能性があるってことで、繁忙期を事業年度の頭に持ってくるのが一つの考えです。
事業年度のお尻に繁忙期をわざと持ってくる会社もあります。
営業系の会社に多いのですが、営業の士気を高めようという意図があるみたいです。
確かに私も昔は営業でしたが、月初よりも月の終盤の方が契約数多めでした。
同じことが一年の終盤にもあるので、確かに事業年度の終わりは士気高めだと思います。
(3)会社の資金繰りに注意して事業年度と決算月(決算日)を決める
経営で売上を立てることと同じぐらい大切なのが、資金繰りです。
滞りなく支払いをおこない、会社運営をスムーズにするスキルと言うか、会社の手元にある資金がなくなれば事業を続けることができないので当たり前ですよね。
事業年度と決算月がいつになるのか、によって資金繰りの大枠も固まるので工夫する価値はあります。
1、意外と大変な税金の支払い
会社経営をして気付くのは、税金の支払いは結構キツいってことです。
まとまった金額がただ出ていくだけ、、、と言えばイメージ悪いですが、本当に気をつけないといけません。
法人税だけじゃなく、従業員から徴収していた所得税とか、年数が経てば消費税だって納めるようになるはずです。
少しずつ納める時期が違うわけですが、手持ちの資金がショートしないように、税金を支払うタイミングと会社にお金があるタイミングが被らないようにしましょう。
なるべく資金の出入りが平準化するように資金繰りを工夫するのも経営者の仕事の一つなわけです。
税金の支払いタイミングは、事業年度と決算月によって変わりますので、その点を考慮に入れなければなりません。
- 法人税:決算月から二ヶ月後までに納税
- 消費税:決算月から二ヶ月後までに納税
- 都道府県民税:決算月から二ヶ月後までに納税
- 法人事業税:決算月から二ヶ月後までに納税
- 市町村民税:決算月から二ヶ月後までに納税
- 所得税:源泉徴収したものは基本は翌月10日まで。(半年に一度納める特別ルールなら7月10日と1月20日)
- 社会保険料:毎月末日
- 労働保険料:6月1日〜7月10日
2、会社として資金が大きくでるタイミングに注意する
一年を通して資金が大きく出るタイミングがあります。
ここに税金の支払いがかぶってしまえば資金繰りに苦しむことになるので、自分の会社がどこでどれぐらいの支出があるのか見極めるは大切。
税金との兼ね合いで、資金繰りが厳しいのであれば、ゆくゆく決算月を変更するのだって視野に入れないといけません。
- 従業員への賞与・ボーナス
- 大量・高額な仕入れ
- 会社としての高額な支払い(新卒採用やライセンス使用料など)
(4)棚卸資産や在庫が少ない時期を決算月にするとラク
決算申告をするための作業に、棚卸や在庫の確認・整理をする必要があります。
もし決算月が、仕入れをたくさんする時期と重なったり、棚卸資産や在庫がまだまだたくさん残っている時期になるようなら、決算申告の作業が少し大変になってしまうわけですね。
あまり優先順位は高くないのかもしれませんが、そういった時期は決算月にしない方が賢明かもしれません。
(5)取引先や関係会社と合わせた事業年度や決算月にする
ときどき、取引先や関係会社と合わせた事業年度や決算月にしたいという声があります。
たとえば自治体や公共期間の決算月は3月です。4月から新しい事業年度が始まるりすよね。
学校とかの始まりも4月だ!
公共機関を取引先に持つ大手企業なんかは、3月に発注をもらいやすいので、それに合わせて売上や予定が組みやすいわけです。
関連会社との取引がある場合も、事業年度を同じにしておけば経営上の数字を立てやすいというメリットがあります。
(6)IFRS(国際財務報告基準)を加味して決める
グローバル化が進み、会計のルールも国独自で設定するだけでなく、最低限の基準を設けて仕事しやすくしましょうって感じのルールがIFRS(国際財務報告基準)です。
この基準の一つに、親会社と子会社は同じ決算月で処理してね!というものがあり、IFRSを適用する会社なんかは、これに合わせているわけです。
小さな規模で始める会社のほとんどにとって、あまり関係のない話でもあります。
◆事業年度と決算月(決算日)に関するQ&A
(1)個人事業主に事業年度という考え方はあるんですか?
個人事業主の事業年度は毎年1月から12月です。すべての個人事業主がこのルールで運営されています。
1月から12月までの一年間の売上や経費を出して、翌年3月15日までに税金を計算して納めるのが「確定申告」です。
法人は事業年度や決算月(決算日)を自由に決められたのに、個人事業主は皆んな同じなんだね。
法人と個人事業主じゃ適用する税金の内容やルールも違うから、税金を計算する期間の区切り方(事業年度や決算月のルール)が違うんじゃよ。
(2)なんで3月決算と12月決算の会社が多いんですか?
日本の会社って3月決算と12月決算がもの凄く多いです。
1、3月決算が日本に多い理由
自治体などの公共機関は3月決算です。なんか明治時代ぐらいからこの仕組みでやっているとのこと。
自治体と取引きをするのは、ほとんど大手企業ですから、その大手企業が公的機関に合わせて3月決算にしていると聞いたことがあります。
また、昔は株主総会を荒らして嫌がらせをする総会屋と呼ばれる人たちがいました。
多くの会社がいっせいに3月決算にすれば、株主総会も同時期に行われます。
そうすることによって、総会屋の力も分散させる意図もあったみたいですね。
2、12月決算が多い会社の理由は?
12月決算が多い理由は、外資系の企業など世界的にみたら12月を決算にして1月から新しい事業年度がスタートする会社がほとんどだからです。
そうしたグローバルな習慣に合わせて日本でも12月決算の会社が増えてきました。
日本では、3月決算の次に12月決算の会社が多いです。続いて9月決算、6月決算と続きます。
四半期ごとの節目を決算月にする会社が多いんですね。
(3)税理士に喜ばれる決算月(決算日)があると聞いたんですけどいつですか?
税理士業界での繁忙期は、12月から3月が一般的です。この時期は確定申告などの期限のある業務が盛りだくさんなのです。
そこで会社の決算申告が12月から3月にかぶらない方が、税理士からは喜ばれる可能性が高いってわけです。
ちなみに都市伝説的な感じですが、この時期は本当に連絡が取りづらいとか、質問しても反応が悪いとか、処理が雑なんじゃないか?みたいなことを知り合いの経営者から聞いたことがあります。
(4)設立した月を決算月(決算日)にしたらどうなりますか?
だいぶ昔に設立した月を決算月(決算日)にした会社を見たことがあります。
何も知らずに決算月と最初の事業年度を決めてしまったらしいのですが、かわいそうな感じでした。
4月1日設立の会社が、4月末を決算月にした場合、最初の事業年度は4月1日から4月30日までしかありません。
たった30日だけが一期目となり翌月5月1日から二期目がスタートするわけです。
デメリットが何かといえば、消費税課税免除の会社であれば、消費税を免税される期間が極端に短いです。
わぉ!課税免除期間がたったの1年と1ヶ月しかないね。
あとは税理士に会計処理をお願いしているのであれば、会社設立してスグに決算申告しなきゃいけないので、無駄に高いお金を払うことになります。
決算申告費用はどこの税理士事務所も15万円ぐらいするのが普通じゃと思う。かわいそうに、、、。
◆「会社設立時の事業年度と決算月の決め方」まとめ
たいていは会社設立する時期って決まっていることが多いですよね。
なるべく早い会社設立日が良いとか、記念日に会社設立をしたいといった感じです。
そう考えると、事業年度と決算月はある程度自動的に決まってきます。
- 資本金1000万円未満で会社設立するなら最初の事業年度は12ヶ月ちゃんと取った方が良い。
月末で区切るなら、数日ほど短くなるけど、なるべく長い事業年度にしましょう。
- 最初の事業年度の、最後の月が決算月になる。
たとえば3月中の設立で、12ヶ月の事業年度を取ると翌年の2月末が決算月(決算日)です。6月中の設立であれば、翌年の5月末が決算月(決算日)といった具合。
繁忙期が決算月になるのを避けるとか、細々したものは後から決算月を変更して対応してしまえば良いと思うのです。
個人的には1000万円未満で会社設立して、最初の事業年度は12ヶ月。三期目以降で運営がラクな時期に決算月変更が王道のような気がしています。
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