会社員やサラリーマンの副業が加速していくと予測される中、うまく収益が発生した方は確定申告をして税金を納めないといけません。
その時に多くの副業サラリーマンの頭を悩ませるのが自分の副業が雑所得なのか、事業所得なのか、という事です。
この線引きによって、納める税金の額や確定申告時の手間が全然違うのです。
・副業サラリーマンの収入の種類は雑所得なのか、事業所得なのか。
・雑所得と事業所得の種類を理解して安全な確定申告を。
◆サラリーマンや会社員の副業による収入の種類
まずはサラリーマンが得ている収入の種類について整理します。会社から得ているお給料と副業で手にする収入の呼び方とルールがあるのです。
(1)サラリーマンや会社員が働いて手に入れるのは給与所得
会社で働いて毎月振り込まれるお給料は「給与所得」という名前で分類されます。
わかりやすさ優先で説明すると、勤務している会社から受け取るお給料や賞与は全て給与所得です。
厳密に言うと給与所得ってもっと詳しい説明が必要なの?
もっと詳細に話すなら、会社員がもらっている年収にあたるのが「給与収入」で、そこから「給与所得控除額」を引いたのが「給与所得」じゃ。
給与所得の計算の仕方は「給与収入ー給与所得控除=給与所得」となります。
・給与収入:一年間の間に会社からもらった収入の総額です。
・給与所得控除:一定のルールに基づいて給与から差し引くことのできる金額です。
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この給与所得控除の存在がイマイチ良くわかなんないんだよなぁ。なんで給与所得を出すのに、わざわざ給与所得控除という特別ルールを適用するの?
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まず知っておかないとならんのは、給与所得とは、この金額に所得税率をかけて税金を計算するのに使われる数字じゃ。
個人事業主なんかは、売上から経費を差し引いて所得を出すんじゃが、サラリーマンのお給料には経費の概念はない。
そこでサラリーマンの人でも不平等感をなくすために経費のような感じで所得税計算する時に差し引くことのできる数字が「給与所得控除」なんじゃよ。
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(2)副業による収入の種類の一つ目:雑所得
次に雑所得と呼ばれる収入の種類があります。
これは税金を計算する時に法律では収入の種類を9つに分けているのですが、この9種類の収入のどれにも属さないものを「雑所得」として分類しているのです。
1、9つの所得の種類に属さないものが雑所得
サラリーマンや会社員の副業収入は、場合によってこの雑所得になることがあります。
確定申告の時に振り分ける収入(所得)の種類は9種類で、ここに当てはまらない収入(所得)が雑所得となります。
1、利子所得
2、配当所得
3、不動産所得
4、事業所得
5、給与所得
6、退職所得
7、山林所得
8、譲渡所得
9、一時所得
2、雑収入から経費を差し引いたのが雑所得
収入(雑収入)から経費を差し引いて、残りの金額が雑所得となります。
国税庁のホームページによれば「経費」の考え方は以下でまとめられています。
1、総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
2、その年に生じた販管費、一般管理費その他業務上の費用の額
たとえばネットで物を売る場合は、売上がそのまま所得になるわけではなく、仕入れを差し引いた利益が税金の対象になります。
さらに言えば、ネットでものを売るためにはパソコンや、通信にかかる費用、郵送費など、物販という売上が発生するのに直接かかった費用を計算して経費にするわけです。
(3)副業による収入の種類の二つ目:事業所得
事業所得とは、その名の通り個人事業として行われるビジネスに対する収入(所得)のことです。
国税庁のホームページではこのように説明されています。
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得を言います。
いわゆる個人事業主の収入は事業所得として分類します。(正確には事業で得た収入から必要経費を差し引いたのが事業所得です。)
副業サラリーマンも場合によっては、雑所得ではなく事業所得として確定申告をする可能性があるわけです。
◆副業はどっち?雑所得と事業所得の違い
確定申告する時の収入の種類に雑所得と事業所得があるのがわかったよ。でも、副業をするサラリーマンや会社員は、どっち所得が当てはまるんだろう?
副業サラリーマンの収入が雑所得なのか?事業所得なのか?については、個々人の状況によって判断が別れるビミョーな部分なのじゃ。
(1)雑所得と事業所得の違いとは?
副業サラリーマンにとって、似たような分類になりそうな雑所得と事業所得ならどっちでも良いじゃん!となりそうです。
ただし、そこには明確な違いがあるので税金の計算にも少なからず影響があるわけです。具体的に事業所得と雑所得にはどんな違いがあるのか見ていきましょう。
番号 | 内容 | 雑所得 | 事業所得 |
1 | 損益通算を使えるかどうか | なし | あり |
2 | 純損失の繰り越し・繰り戻し | なし | あり |
3 | 青色申告特別控除 | なし | あり |
4 | 青色申告専従者給与 | なし | あり |
5 | 30万円未満の少額減価償却資産の特例 | なし | あり |
1、損益通算を使えるかどうか
雑所得だと損益通算を使えませんが、事業所得だと損益通算を使うことができます。特に副業サラリーマンの場合は節税に違いが出るテーマでもあります。
サラリーマンはお給料から所得税が天引きされていますよね。もし、副業で赤字が出たらお給料の収入と相殺できる特別ルールが損益通算です。つまり副業で赤字なら、相殺されてお給料で天引きされた所得税が戻ってくる可能性があるわけです。
損益通算については、所得税の還付を目的として赤字続きの副業をわざと行うことは違法行為として過去に逮捕者も出ている手法です。ちゃんとした方法で全うに損益通算を適用するには「会社員は副業が赤字でも確定申告した方が良い!サラリーマンの損益通算方法」の記事をご覧ください。
2、純損失の繰り越し・繰り戻し
事業所得であれば赤字が出た時に、その赤字分を繰り越して将来の黒字と相殺することができますが、雑所得にはそれができません。
同じように、赤字分を少し前の黒字分とも相殺する純損失の繰り戻しも、事業所得では可能ですが、雑所得ではNGです。
3、青色申告の特別控除
確定申告の方法には青色申告というものがあります。複雑な処理をして書類を作る代わりに税務的なメリットを与えてくれるというものです。
その中に「青色申告の特別控除」として10万円や65万円を所得控除してくれるものがあるのですが、事業所得でないとこれを使えません。
4、青色申告の専従者給与
青色申告には特別控除だけではなく、親族に払う給与を経費にできる特別ルールも使えます。(個人事業主の場合は、基本的に親族に払う給与は経費にできないのです・・・)
これも事業所得は利用できますが、雑所得には適用できません。
5、30万円未満の少額減価償却資産の特例
青色申告の特典として、30万円未満の物品を買っても一括で経費にできるというものがあります。基本的に10万円以上の物品を買うと、数年に分けて経費にしないといけないのですが、青色申告なら特別ルールでスグに経費にしてOKなわけです。
青色申告を適用できない雑所得には、もちろんこの特典は使えません。
(2)副業サラリーマンの収入が事業所得となる条件は?
雑所得と事業所得の違いを見てもわかる通り、税金的には事業所得の方がメリットが多いです。
そのため、副業サラリーマンはこぞって事業所得で確定申告をしたがると思うのですが、ちょっと待ってください。
雑所得と事業所得の明確なボーダーラインがないとはいえ、好き勝手に事業所得に分類できるわけではなくて、過去の裁判の判例からも一応、こんな考え方が大事です!みたいな情報が出ているわけです。
それは、事業所得として考える場合の以下の項目です。
1、営利性・有償性の有無
2、継続性・反復性の有無
3、自己の危険と計算における企画遂行性の有無
4、事業への精神的・肉体的疲労の程度
5、社会通念上事業と言えるかどうか
これら全てが必要というわけではないですが、この項目を基準としながら個別に判断していくというわけです。
1、営利性・有償性の有無
ちゃんと利益出るの?赤字目的じゃないよね?みたいな部分が見られます。事業として行うのであれば必ず利益を出そうとするはずです。ずーっと赤字続きのビジネスを事業と言えるのでしょうか?ということです。
赤字目的のサイドビジネスとして、悪質な税金逃れと見なされてしまうと不幸なことになってしまいますので、気をつけましょう。
2、継続性・反復性の有無
たまたま引き受けた一回だけの仕事で受け取った収入は、継続するわけじゃないし、反復しているわけでもないですよね。これだと雑所得です。
事業所得というからには、継続して売上が発生したり、反復して収入が入ってくる必要があるわけです。FXなんかも投機性が強いので、事業とは認められないことが多い。
3、自己の危険と計算における企画遂行性の有無
これは副業において、ちゃんと時間をかけて真剣にしているかどうか、という事です。事業であるなら仕入れをしたり、設備を整えたり、人を雇ったりある程度、事業に関するリスクを負っているのだと思います。
ギャンブルとかFXのように、考え方によってはあまり労力をかけずに一瞬で多額が手元に入るような副業は事業として認められにくいというわけです。
4、事業への精神的・肉体的疲労の程度
事業というのは何もしなくても手元に入るような性質の売上でない必要があります。実際に営業活動をして者を売ったり、顧客との折衝など精神的なストレスもあるはずでしょう。
こうした精神的・肉体的な疲労が全く無いようなビジネスなら事業性は無いと判断されるかもしれません。
5、社会通念上「事業」と言えるかどうか
1〜4までの項目がなぜ事業所得としての判断材料になるかと言えば、世間一般的に「事業」と説明できるかどうかによるわけです。
しっかりと収益を出すために出費をしたりリスクを犯して、時間をかけて肉体的・精神的な負担もあり、継続的に事業としての実態があることを税務署に説明できれば良いと思うのです。
◆「会社員の副業が雑所得か?事業所得か?」まとめ
会社員やサラリーマンが副業をして確定申告をするようになったら所得の種類が雑所得なのか、事業所得なのかは大きな問題です。
副業の種類にもよりますが、明確なボーダーラインが無いので事業所得で確定申告をしたい場合には必ず過去の判例からわかる事業所得に求められる要素が満たされているか整理しましょう。
「必ず儲かるという前提で事業を始めているかどうか」
「一日のうちある程度の時間を一定期間かけて事業として取り組んでいる」
「可能であれば人を雇ったり、外注したり事務所を借りたり、設備を整えたりの投資をしている」
「事業に関しては計画的に毎日工夫をしながら改善をしている」
「副業からの収益がなければ普通の生活に影響がある」
この点を満たすように今からビジネスモデルを整えて、税務署からツッコミがあった場合も理路整然と対応できるようにしておきましょう。
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