学校を経営するには、学校法人という組織で運営しないといけません。
塾や予備校のように株式会社を設立して運営というように、カンタンに進められるわけではないんですね。
ゆくゆくは学校法人を経営して、教育についてど真ん中を突き進んでみたい!という方に向けて、そもそも学校法人とは?というところから、その作り方までわかりやすく解説したいと思います。
学校でも私立とか公立とかあるし、小学校、中学校、高校、大学と幅も広いから複雑なのかな?
学校法人の全貌がわかるように、なるべく網羅したつもりじゃから、順を追って説明していくぞ。
学校法人とは?株式会社や他の法人との違い
世間でよく言う「私立学校」。これが学校法人です。
この私立学校に対して、国や地方自治体が運営する公立学校というものがあります。
ちなみに私は公立の中学校と高校の出身です。大学だけは私立の学校に行きました。
この例でみると、私が人生で関わった「学校法人」は私立の大学だったということです。
1、学校法人とは「私立学校法」のルールによって設立された法人
幼稚園も、小学校も、中学校や高校や大学も、私立と名の付く学校は基本的に「学校法人」によって運営されています。
そして学校法人のルールを決めているのが「私立学校法」です。これで設立や運営するときのルールや基準を決めています。
教育は国としても大切な事業の一つです。たとえば株式会社が好き勝手されるよりも、厳格なルールと基準の中で、みんなが安心して教育を受けられる環境が大切と考えているのです。
そのため、誰でも学校を経営できるというわけではなく、法律で定める条件をクリアして、所轄庁(いわゆる国や都道府県のこと)から許可をもらって初めて学校を運営できるというわけですね。
また、学校法人の設立に関する法律だけでなく、実際に学校を経営するときに国が補助金を出す仕組みを整えた法律や、教育の理念・目的を実現させるための基準を設けた法律など、さまざまなルールが設定されています。
いろんな法律でがんじがらめで、学校の経営って大変そうだね。
国としても、何でもかんでも自由にというわけにはいかな分野もあるじゃな。特に教育はそういうことじゃ。
(2)学校法人を運営する機関(組織体制)
学校法人の組織の体系は、5人以上の理事でつくられる理事会があり、監事と評議会というもので形作られます。
第35条
学校法人には、役員として、理事五人以上及び監事二人以上を置かなければならない。第40条
1.学校法人に、評議員会を置く。
2.評議員会は、理事の定数の二倍をこえる数の評議員をもつて、組織する。引用元:e-GOV「私立学校法」
1、理事
学校法人で言うところの理事は、実質的に経営に従事する人たちです。
この理事が5人以上そろわないと学校法人を設立することはできません。
この5人以上の理事が集まって、あーだこーだと決めるのが理事会。その理事会を代表するのが理事長なわけです。
よく学園系のドラマとかで理事長とか出てくるけど、私立の学校で一番エラい人だったんだね。
そうじゃね。ちなみに理事会は基本的に過半数の多数決で、いろんなことを決めていくことになるんじゃ。
2、監事
監事は、学校法人の運営が、財務などの面から正しく行われるのかチェックする役割の人たちです。これを監査と言います。
この監事を2名以上置かないと学校法人は設立できません。
3、評議員会
評議員会は、理事会とはまた別の組織です。理事の二倍の人数で組織されないといけません。
理事全員が評議員になったとしても、同数の評議員が外部から構成されるので、より平等に物事を判断できるはず!というわけです。
学校法人の経営について、大切なことは評議員会のOKをもらわないといけません。
評議員会から許可もらわなきゃいけない、大事なことって何なの?
借金したり財産処分したり、ルール変更したりするときは、理事長は評議員会からOKをもらわなきゃあかんぞ。
(3)学校法人のメリットや株式会社との違い
学校法人の特徴をより鮮明にするために、メリットや株式会社との違いを比べてみましょう。
1、学校法人を設立するメリットとは?
学校法人を設立することによって、税金が優遇される。これが学校法人の大きな利点だと言えます。
法人名に学校法人と表記されることによって世間から信頼が増したり、補助金をもらえるようになるのもメリットですよね。
あくまで公益性の高い仕事ですから、国からも支援(補助金や税の優遇)があるわけです。
2、学校法人と株式会社の違い
株式会社は、株主がお金を出資して、それを経営者である取締役がモノやサービスを提供して利益を得ます。
その利益を次の会社の活動に使ったり、お金を出資してくれた株主に還元したりして、規模を大きくしたり、長く続く会社にしようと切磋琢磨しているわけですね。
あくまでも、利益を追求していくという大目的があります。学校法人のように特に国や地方自治体から許認可を得る必要もありません。
ここまでで、株式会社設立と学校法人設立の具体的な違いは、そもそも株式会社が利益を追求していく組織であるのに対して、学校法人は利益追求が目的ではないというのが挙げられます。
あくまでも教育が目的であり、様々な価値観を持った将来の国を背負って立つ人材を育てあげるわけですね。
だから税金についても、学校法人の方が優遇されていますし、国からも補助が出たりするわけですね。
◆学校法人の設立方法・作り方
学校法人をつくるには、「寄付行為」をもって会社設立の手続きをして所轄庁の認可を受けないといけません。
- 「文部科学大臣」大学および専門学校
- 「都道府県知事」小学校・中学校・高等学校・盲学校・聾学校・養護学校・幼稚園ならびに専修学校
(1)学校法人の設立に必要な寄付行為とは?
寄付行為というのは、学校法人設立の文脈で使われるときは「定款」と同じような意味になります。
なんで寄付行為という文言が定款と同じ意味なんだ!って声が上がってきそうですが、学校法人は寄付で成り立っているからこそ、という強引な結びつけで覚えて良いと思います。
学校を創設するには土地だったり、建物だったり、設備だったり、創業する人たちの寄付によってまかなわれます。
そのため学校法人設立の際には、寄付によって学校運営する要件をそろえていき、それが基準を満たしたことを国に申請して認可を得るわけですね。
寄付を受ける=学校法人の要件を揃えると強引に結びつければ、法人運営の基本ルールを定款ではなく寄付行為という言葉で同じ意味を持たせていることに納得できるような、できないような(笑)。
(2)学校法人設立の流れ
- 管轄の省庁に事前相談
- 学校法人の理事や監事、評議員や土地など申請のための要件をそろえる
- 学校法人設立認可申請の提出
- 所轄庁の実地調査・審査
- 認可証の交付
- 学校法人の設立登記申請
- 口座開設や土地建物移転登記など
- 各種書類の届出
(3)学校法人の設立に必要な書類の雛形やフォーマット
文部科学省へ学校法人の申請をするための書類はこちらのサイトに雛形やフォーマットがあります。
そもそも学校法人という器がないと物事が進みません。学校法人を登記申請する書類の雛形やフォーマットは法務局で共有されています。
◆株式会社が作る学校って知っていますか?
小泉内閣の時に、制度改革の一環として株式会社が設置できる学校を株式会社立の学校とされた。
たしかに学校法人として学校を運営しようと思うと手続きも国に申請したり、教育のカリキュラムも自由に考えることができません。
それが、株式会社立の学校であれば、ある程度自由にカリキュラムも組むことができますし、校舎や施設の条件が緩いのもメリットかと思います。
ただし、学校法人に適用される税金の優遇もなければ、助成金も受けれないので非常に財政的に厳しい会社が多かったそうです。
4割もの学校が赤字だったと言います。新しい取り組みであるにもかかわらず、こんなにも差が出てしまうのは残念です。
そんな背景から株式会社立の学校から、学校法人へと切り替える学校もあるようです。
◆「学校法人の設立」まとめ
人を作ることは、国を作ることとはよく言ったものです。
確かに教育こそが、今後の日本を占う大切な要素であることに変わりはありません。
学校は教育を担う非常に社会性の高い事業であるからこそ、利益追求、規模の拡大でもおごとを進めてはダメな気もします。
だからこそ、学校法人には厳しい審査があるわけですし、税金の優遇措置や、資金の補助なんかがあるわけですね。
とはいえ株式会社の運営する自由な教育から生まれるかもしれない新しい可能性にも期待したいところではありました。
教育の場、人をつくる場は何も学校だけではなく、家庭や職場もその大きな役割を担うわけですから、私たちも気合を入れて教育に向き合っていかなくてはですね。
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