未成年と聞いて「20歳未満の子どものことでしょ?」と思ったら、ちょっと待ってください。
2022年から民法が改正されて、18歳未満が未成年となるのです。
未成年の人は、親の管理下にあるので自由に契約できないのが現状です。果たして会社設立はできるのでしょうか?
特に株式会社は、取締役や発起人や株主と役割がいくつかあります。なにかと制限をされがちな未成年が、株式会社を設立するためにどんな点に注意をすればいいのか整理します。
未成年が株式会社を設立するときの注意点を網羅します。
未成年は株式会社設立時の発起人になることはできるの?
株式会社の特徴は、経営と出資を分けられることです。
お金は持っていないけど経営センスはあるから、取締役だけになりますという人がいます。経営はできないんだけど、お金は持っているから出資をしますという人もいます。一人だけの株式会社だから両方になりますという方もいます。
発起人とは、株式会社の設立を企てる人です。そのため設立するときの会社の要件を決めたり、資本金なども準備しないといけません。
株式会社設立時の多くは、出資をした発起人がそのまま株主になるスタイルを取ります。もちろん会社設立をしたあとに出資をしてもらい株主を追加することもありますが、ここでは発起人がそのまま株主になると考えておきましょう。
未成年は法律行為をするときに親の同意が必要
民法5条では未成年が法律行為をするときには、法定代理人の同意がないとダメと決めています。法廷代理人というのはわかりやすく親だと考えてみましょう。
会社設立の手続きも、法律行為だと考えると親の同意が必要ということになります。
(未成年者の法律行為)
G-GOV法令検索「民法第五条(未成年者の法律行為)」
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
未成年でも株式会社設立時の発起人になれます
結論から言うと、未成年でも発起人にはなることが出来ます。発起人になることに法律は制限を設けておらず、基本的には誰でもなれると考えて大丈夫です。
ただし、手続きの面から未成年が発起人となるには、印鑑証明書や親の同意など超えるべきハードルがいくつかあります。
定款認証のときに発起人の印鑑証明書が必要
発起人が定款認証をするときに、印鑑証明書を提出します。ここで立ちはだかるハードルが15歳未満は印鑑証明書を作れないという点です。
発起人は会社設立の書類を準備する立場の人ですから、株式会社設立時には定款という書類もつくります。
そして、定款はとっても大事な書類ですから、公証人役場でちゃんと法律にのっとって間違いなく作られていますという認証を受けなければなりません。
定款は発起人の印を押してますので、その認証を受けるときに発起人の印鑑証明書が必要なのですね。
▼15歳未満の未成年は印鑑証明書をつくれない▼
15歳未満の人は印鑑証明書をつくることができません。
定款認証には公証役場で印鑑証明書を提出しなくてはいけません。未成年が発起人だと印鑑証明書が無いので定款認証の手続きが進まないなんてことも出てきます。
そこで親が代理人となることで、未成年でも定款認証する道があります。詳しくは管轄の公証役場に確認するようにしましょう。
未成年の発起人は印鑑証明書が作れるかどうかで手続きが変わる
未成年でも印鑑証明書を作れるかどうかで、手続きが少し変わります。そこで印鑑証明書が手に入る15歳以上の未成年と、印鑑証明書が手に入らない15歳未満の未成年の二パターンを見ていきましょう。
15歳以上の未成年は印鑑証明書と親の同意が必要
15歳以上であれば印鑑証明書が手に入りますので、第一関門突破です。次に未成年ですから親の同意が必要です。
・親権者双方による同意書(両方の実印を押印)
・親権者双方の印鑑証明書
・戸籍謄本
・(発起人が15歳以上の場合は)本人の印鑑証明書
未成年が株式会社設立をするときには、定款の一番最後の箇所に親が同意しているということで記名押印する必要があります。
以下のような感じで、親の氏名と押印を追加すればOKです。ちなみに、未成年の発起人が15歳未満であれば、本人の押印は必要ありません。
以上、○○株式会社の設立のためこの定款を作成し、発起人が次に記名押印する。
令和○年○月○日
山田太郎(発起人) 印
山田太郎の父親 印
山田太郎の母親 印
15歳未満の未成年が発起人となるときは親が代理で手続き
印鑑証明書を発行できない15歳未満の未成年は、親権者に代理で手続きしてもらうことで会社設立が可能です。
・親権者双方の印鑑証明書
・戸籍謄本
15歳未満の未成年に代わって親が手続きをする感じです。定款も親権者である親の名前で作成し、押印をします。
管轄の公証役場によって手続きの仕方が変わることがあるようなので、必ず電話で事前に確認をするようにしてください。
未成年が株式会社の取締役になるときの注意点
株式会社の経営に携わる人のことを取締役と言います。
発起人と同じように、未成年が取締役となれるか見ていきましょう。
未成年は株式会社の取締役になれるの?
未成年は株式会社の取締役になれるのでしょうか?取締役については会社法で定めらています。
(取締役の資格等)
第三百三十一条 次に掲げる者は、取締役となることができない。
一 法人
二 削除
三 この法律若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)の規定に違反し(〜省略〜)の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
G-GOV法令検索「会社法第三百三十一条(取締役の資格等)」
四 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
なんか難しく書いてありますけど、ここで羅列される人が取締役になれない人です。4つに分けて書いてあるんです。わかりやすく、凄く噛み砕いて紹介すると以下のような感じです。
1、法人は取締役になれない。
2、二番目は法改正によって削除された項目です。
3、会社法をはじめとした会社に関する法律に違反して刑に処せられている人は取締役になれない。
4、他の法律でも禁錮刑以上の刑に処されている人も取締役になれない。
つまり、未成年は取締役になれないわけじゃないってことです。ここでなれると言い切っていないのは、他に注意すべきことがあるので後半で紹介します。
未成年が取締役になるには基本的に印鑑証明書が必要
会社設立は法務局に手続きをします。その時に、取締役の印鑑証明書も一緒に提出します。
もう少し細かい話をしたいのですが、株式会社の組織構成には二種類あって、取締役を置く株式会社と取締役を置かない株式会社です。
ほとんどの会社設立は、取締役会を設置しない株式会社になると思います。取締役会を設置するには、取締役を3名以上に監査役を1名置かないといけないので設立のハードルが高いからです。
取締役会を設置する株式会社は代表取締役だけの印鑑証明書でOK
遭遇するケースは少ないのですが、取締役会を設置する株式会社は代表取締役の印鑑証明書を提出すれば大丈夫です。
代表取締役の他にも取締役がいるのですが、その人たちの印鑑証明書は必要ありません。
そのため、印鑑証明書の取得できない15歳未満の未成年でも、取締役設置会社であれば取締役になれる余地がでてくるのです。
取締役会を設置しない株式会社は取締役全員の印鑑証明書が必要です。
未成年の株式会社設立で問題になってくるのが、取締役会を設置しないケースです。この場合、取締役全員の印鑑証明書が必要になります。
印鑑証明書が取得できる未成年なら良いのですが、15歳未満の場合は印鑑証明書が発行されないので取締役になることは難しそうです。
未成年の場合は親権者の同意が必要
発起人のときと一緒なのですが、取締役に未成年がなる場合も親の同意が必要です。
・親権者双方の同意書
・戸籍謄本
会社設立時の手続きはともかくとして、設立後の経営に関する意思決定や契約ごとすべてについて親の同意が必要かというとそうでもなさそうです。
本来であれば、未成年ならすべての契約に親の同意は必要です。ただし、会社設立時の取締役になることに対して承諾しているわけだから、取締役として行うことは大丈夫ですよね、というスタンスらしいです。
また、代表取締役となると会社を代表する人物なので、極端に若すぎる人が代表取締役になっても大丈夫かという問題も出てきます。
取締役会を設置する場合でも、設置しない場合でも、どちらにせよ印鑑証明書を提出しないといけないので15歳未満が代表取締役になるということは難しいと考えた方が良さそうです。
まとめ
未成年はいろいろと行動が制限されていますけど、親権者である親の協力があれば株式会社を設立することができます。
親権者の同意をどうするのか?印鑑証明書をどうするのか?の二点が超えるべきハードルです。
・未成年でも株式会社を設立できる
・親の同意が必要なので親権者の同意書や戸籍謄本を準備する
・15歳以上の未成年は印鑑証明書を用意する
・15歳未満の未成年は印鑑証明書が用意できないので親権者が代理となる
・取締役は本人の印鑑証明書が必要なので15歳未満の未成年はなれない
ここで紹介した内容は、管轄する法務局や公証役場によって手続きが一部変わる可能性がありますので、必ず電話等で確認しながら進めてください。
もし自分で会社設立書類を作成する予定がある時は、無料で利用できる会社設立freeeというサービスを検討してみてください。
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