会社設立が終わったあとも事務作業は終わりません。税務署や都道府県にさまざまな書類を準備する必要があるのです。
その一つが法人設立の届出書。会社ができました!と税務署や都道府県などに教える書類です。
調べてみると法人設立届出書のフォーマットには添付書類の項目が…。設立時の貸借対照表や株主名簿などの文字が並びます。
今回は、そもそも設立時の貸借対照表って何?本当に必要なの?ってところを調べてみました。
結論から言うと、法人設立届出書を出すときに貸借対照表は必要ありません。正しくは昔は出していたけど不要になりました。
念のため、いくつか税務署と都道府県に確認を取ったのですが(もちろん全部の確認はムリです)、すべてで設立時の貸借対照表はいらないと言われました。
え?法人設立届出書の雛形には貸借対照表って書いてあるの見たことあるよ!
そうなんじゃよな。他のサイトでも設立時の貸借対照表が必要って書いてもあるし、その辺を深掘りしてみよう。
◆会社設立後に届出る書類について
最初に会社設立後の手続き全体を見ておきましょう。
会社設立後に登記事項証明書(登記簿謄本)を手にしたら、税務署や都道府県や年金事務所に、会社ができたことを知らせにいかないといけません。
会社ができたことを届出ると同時に、「うちの会社はこんな状態なので、このルールを適用してください」とこちらからお願いしないといけないわけです。
(1)会社設立後に税務署へ届出るもの一覧
届出の中で一番種類が多いのが税務署関係です。
1、法人設立届出書
内国普通法人等を設立した場合の手続です。
税務署に株式会社設立しました!と報告する書類です。税務署ではこの届出を元に会社のことを把握します。会社設立後にすみやかに法人設立届出書を出します。
2、青色申告の承認申請書
一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる青色申告の制度があります。
引用元:国税庁「青色申告制度」
青色申告とは難しい処理のしかたで税務申告をすると税務署が税金を少し優遇してくれるというものです。
難しい処理で申告してもらった方が、税務署も会社の詳細を理解できるのです。ただし、申告する側に負担があるからメリットを与えているのです。わたし青色申告します!と申請するための書類が「青色申告の承認申請書」です。
3、給与支払事務所等の開設届出書
給与の支払者が、国内において給与等の支払事務を取り扱う事務所等を開設、移転又は廃止した場合に、その旨を所轄税務署長に対して届け出る手続です。
これは会社が従業員を雇ってお給与(役員報酬含む)を支払いますよ、ということを税務署にお伝えする書類です。
4、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、源泉徴収した所得税及び復興特別所得税を、半年分まとめて納めることができる特例があります。
従業員のいる会社は、お給料から天引きして所得税を集めます。9人以下の会社は集めた所得税は半年分をいっぺんに収めればOK。
毎月所得税を納める手続きしてたら面倒なので、このような制度があるんですね。特別ルールなので、適用してもらうには「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」というものを出さないといけません。
- 棚卸資産の評価方法の届出書
- 減価償却資産の償却方法の届出書
税務署に届出る内容をもっと詳しく。
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(2)会社設立後に都道府県や市区町村へ届出るもの
設立後の手続きが必要なのは税務署だけではありません。都道府県などをはじめとした自治体にも書類を出す必要があります。
1、法人設立届出書
都道府県税事務所というところに「法人ができました!」という書類を提出します。都道府県が会社から税金を集めるための情報です。
2、市町村役場へ法人設立届出書
市町村など役場にも法人設立届出書を提出しないといけません。都道府県とは別に市町村単位で税金を集めるための情報です。
(3)会社設立後の社会保険や労働保険の届出について
会社設立したあとの公的保険も対応すべきことの一つです。
社会保険と労働保険の違いがわかならない人はこの記事に注目
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1、年金事務所へ健康保険と厚生年金の手続き
法人を設立すると必ず社会保険に入らないといけません。年金事務所へ行って手続きすることになります。
2、ハローワークへ雇用保険の手続き
失業したときなどに給付金がもらえる雇用保険はハローワークで手続きします。従業員がいないときは、雇用保険には入れません。
3、労働基準監督署へ労災保険の手続き
仕事中のケガなどの治療費などに充てられる労災保険は労働基準監督署での手続きです。これも従業員がいないと入ることができません。
◆会社設立後の貸借対照表が必要ないって本当?なんで?
昔は税務署や都道府県に「法人設立届出書」を提出するときに、添付書類として貸借対照表を作っていました。
その他にも設立趣意書とか株主名簿なんかも添付書類として挙げられていたのです。
でも設立やその後の手続きをスマートにしようという動きから、添付書類である貸借対照表などは不要になりました。
なんだ!最初からやってくれたら良かったのにね!
だんだんと手続きもカンタンな方向へ進んでいて、良い傾向だと思うぞ。
(1)そもそも貸借対照表とは?
余談ですが、そもそも貸借対照表ってどんな書類なのか整理しておきます。
そもそも「かしかりたいしょうひょう」って何?
これは「たいしゃくたいしょうひょう」と読むんじゃ。
会社は毎日いろんな事業活動を行うわけですが、それを書類を使って第三者に伝えようと考えると大変です。
日々の活動(会社のお金の動き)を記録して、ある時点で会社にある現金や預金がいくらあるのか表にまとめなければなりません、この会社の財政状態をまとめた表を貸借対照表と呼びます。
「貸借対照表の左側が資産、右側が負債と資本」と言った瞬間から数字が苦手な人からギブアップという心の声が聞こえてきそうです。
かなりざっくり説明してしまうと、貸借対照表の左側は会社が資産をどういう状態で持っているのかを記載して、右側にはその資産をどうやって集めたのかを書くわけですね。
(2)なんで設立時の貸借対照表は必要なくなったの?
ルール変更によって設立時の貸借対照表は提出しなくて良くなりました。平成31年度の税制改正の大綱にも、しっかり定款の写し意外は必要ないよ!ってことが書かれています。
法人設立届出書及び外国普通法人となった旨の届出書について、定款等の写 し以外の書類の添付を要しないこととする。また、収益事業開始届出書につい て、収益事業の概要等を記載した書類及び合併により設立した法人に係る書類 の添付を要しないこととする。
引用元:平成31年度税制改正の大綱
念の為、東京都台東区の税務署に電話で確認したところ、法人設立届出書は定款のコピーと一緒に出してくれたら大丈夫!とのこと。
台東都税事務所にも電話したら、法人設立書と定款コピーと履歴事項全部証明書を提出すれば良さそうです。
(3)つまり法人設立届出書に添付する書類とは?
結局のところ税務署に法人設立届出書を提出するときは、定款のコピーだけを添付すれば大丈夫になりました。
- 法人設立届出書
- 定款のコピー
都道府県や市区町村にも法人設立の届出書を提出するときは、定款のコピーだけでなく、履歴事項全部証明書も一緒に出さないといけません。
税務署に提出するときの添付資料として違う部分なので注意しましょうね。
- 法人設立届出書
- 定款のコピー
- 履歴事項全部証明書
◆「会社設立時の貸借対照表」まとめ
会社設立後に必ずやらなければいけない法人設立届出書の申請。昔は貸借対照表を添付しなきゃいけなかった関係で、他のサイトでは貸借対照表が必要って書いているところもあります。
今はルールが変わり税務署に提出するときは定款のコピーだけ。都道府県や市区町村に提出するときは定款のコピーと履歴事項全部証明書で良くなりました。
ちなみに細かい話なんですけど、都道府県と市区町村に提出する法人設立届出書は東京23区の場合は都税事務所に出せば情報が共有されるので一カ所だけで大丈夫です。
他のところは都道府県と市区町村にそれぞれ出さないといけないので、注意してくださいね。しかも必要となる書類が違う場合がありますので、それぞれの地域で念のため電話確認しておくと良いでしょう。
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