なるべく多くの経費を計上できれば節税になる。
そこで「住んでいるところの家賃をまるっと経費にできないかな?」というのは誰もが必ず通る道。
でも、ちょっと待ってください。個人事業主として経費にできるものって、売上をあげるために必要な費用です。その家賃、本当に経費にできますか?
危ない橋を渡りがちな家賃の経費化。やり過ぎはもちろんダメです。かといって経費にできる範囲を計上しないのはもったいない。
そこで、個人事業主の家賃はどうしたら経費として考えることができるのか、整理してみます。
会社設立をしたときは、社宅という選択肢もあります。家賃を経費にできる幅が広がるから以下の記事もぜひご覧ください。
事業で使っているスペースの割合を経費に計上する
個人事業主が家賃を経費にするセオリーは、事業で使っているスペースを按分するやり方です。
按分っていうのは、分けるってこと。
基本ルールはプライベート部分と事業で使っている部分を分けて、事業用部分だけを経費にすることです。
家賃を経費にするために仕事スペースと居住スペースは分ける!
パソコン一台あれば完結する仕事はたくさんあります。わざわざオフィス借りず、自宅をオフィス代わりに使う個人事業主は多いのではないでしょうか。
そこで金額の大きい家賃をうまいこと経費にできないかと考える人が多いわけです。自宅で仕事をしているのだから、自宅家賃を経費にしたい気持ちはよくわかります。
気をつけないといけないのは、プライベート部分と仕事部分を明確に区別すること。
必要経費とされない家事関連費は、次の①②以外の経費である。
①家事上の経費に関連する経費の主たる部分が事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費、および②青色申告の場合で、家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、事業所得等を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費、である(所得税法 施行令96条参照)。
裏を返すと、共有スペースは経費にできません。仕事中もトイレを使うんだから・・・という理由は通用しないわけです。
リビングルームも家族で食事をしたり、みんなでテレビを観たりしますよね。仕事のみで使っているとするには、無理があります。
事業で利用しているのなら水道光熱費・通信費も経費に入れる
仕事で電気や水道、ガスを利用していれば、その費用も按分して経費計上することができます。
ここでも常識的に経費する割合を考えてください。
パソコンで完結する仕事なのに、水道代やガス代を経費にするのはおかしいですよね。不安を無くすため電気代だけを家賃と同じ割合だけ経費にするのが良いと思います。
この場合は通信費なら、事業に使っている割合を経費にしちゃって良いと思います。
家賃と同じように、面積の按分でも良いと思うのですが、より正確に計上できる方法があれば、そちらを採用してください。
個人事業主が持ち家を経費にする場合
私も最近のブームに乗って、ローンを組んでマンション買いました。
自宅マンションの一部を個人事業として使って経費にできないか?たとえばローンを毎月10万円払っているから、20%の2万円を経費にできないっすか?
結論、できない。購入済みの自宅は経費にできない。経費にできないというか、個人事業主が家賃を払って経費化するわけではなりません。
購入した自宅にかかる以下の費用の一部を経費にしていくイメージです。
- 建物の減価償却費
- 管理費
- 住宅ローンの利息分
- 固定資産税
- 火災保険等
これらの費用の事業に使っている割合を、経費計上できるわけです。
もし住宅ローン控除を使って節税対策しているって人がいたら、事業で使うスペースの割合を50%以上にしないように気をつけてください。
ローンを組んで住宅を購入すると、税金が安くなるというありがたい制度なんですけど、居住用スペースが半分以上ないと適用されないんです。
事業で半分以上使ってますとなると、お得な住宅ローン控除が使えなくなるので気をつけてくださいね。
自宅家賃を経費にするときの注意点
個人事業主が自宅家賃を経費にするとき、踏んではいけない地雷がいっぱい。
注意点を紹介します。
自宅家賃の一部を按分して経費にするときの注意点
家賃の一部を経費にして税金対策するにあたり、気をつけたいポイントがあります。
・青色申告じゃないと自宅家賃を経費にできないこともある
確定申告のやり方には青色申告と白色申告があります。カンタンな白色申告では、自宅を事業で使っている割合が50%以上でないと経費にできません。
作業が複雑な青色申告なら、割合に制限はありません。ちゃんと算出されたパーセンテージで経費化できる。
ほとんどの個人事業主は、自宅の半分以上を事業で使ってるなんてことはないから、必ず青色申告ができるようにしておきましょう。
・自宅で仕事をしているという合理的な理由が大事
さすがに自宅で仕事してないのに、家賃を経費にすることはできません。
たとえばオフィスや事務所を持っているのに自宅で仕事しますか?って普通の人が疑問に思いそうなことはちゃんと説明できるようにしておきます。
あー、それなら自宅でも仕事するよねって感じです。
ときどき、資料を置いている部屋なのでみたいな感じで一部屋分を経費計上している人もいます。
その部屋を事業以外で使っていない?大丈夫?っていうことを納得してもらえるストーリーと伝えられるのが理想的です。
・税務調査が入ったときのリスクを考えて証拠を残す
自宅を事業に使っている証拠って何でしょう?プライベートと事業を明確に区分けしている証拠って何でしょう?
調査のときに現場を見ればわかるんですけど、引っ越して物件が変わった時とか気をつけたい。用意したいのは、部屋の間取りがわかる情報ですよね。それと働いている環境を示すため写真とか動画で情報を残しておくと良いでしょう。
あとは賃貸借契約書なんかも残しておけば家賃と管理費とか敷金・礼金もわかるはずですから、残しておきたい資料です。
個人事業主が経費を考えるときに、自宅家賃もそうなんだけど、それって常識的に考えて大丈夫?という視点が大事です。
たとえば自宅家賃は事業で使っているスペースを按分するわけなんですけど、リビングでzoom使って商談するから半分ぐらいは経費に入れようとかはNGなんです。
事業の売上に関係のある支出が経費になるわけですけど、寝室は仕事への活力を回復させる場所だから経費になる!なんていうのは、もうメチャクチャ。
常識って何?みたいな論点はありますけど、それでもあえて常識的に考えて大丈夫って視点はとても大切です。
個人事業主が自宅家賃を経費にすることに関する裁判の判例
個人事業主の自宅家賃の経費に関して、裁判で争われた事例があります。
これから経費化したいと思っている人にとって、参考になる事例だと思います。念のため共有をさせていただきますね。
自宅で保険の代理店を行っている自営業の方の判例です。
・無茶な自宅家賃の経費化は危険
自宅は2階立ての3LDKで家賃は月17万円。按分の仕方に無理がありました。
一階部分のリビングは全て事業で使っているとし経費計上し、二階の3部屋のうち1部屋も全て事業用として経費按分していたようです。
二階の二部屋しか生活で使っていないという状況です。いくら何でもそれはおかしいとした税務署に対して、裁判を起こして反論したとのことでした。
・自宅兼事務所を経費にするには明確な区分をする
法律では白色申告の人は「事業で使っていること」「明確に区分されていること」が必要とされています。青色申告だと「事業で使っているのが明らかな部分」とされています。
白色申告の方が厳しく設定されているようです。青色申告でも半分以上事業で使っていれば経費に出来るとしているのですが、半分以下だとしても明確に事業で使っていることを証明できるのならその割合分を経費にしていいですよとしています。
今回の判例のケースでは仕事用と家庭用の明確な区分が出来ないとされて、この人裁判で負けてしまいました。
確かにキッチンを含めたリビングのスペースまでも全部経費にしていたりとかなり無理がありました。家賃を経費にしていく際にはこうした点も気をつけましょう。
まとめ
自宅家賃を経費にする。
個人事業主の税金対策としては効果的だと思います。
だけどルールにのっとって、ちゃんと事業で使っている割合を計上すること。バレなきゃ大丈夫じゃない?という邪な気持ちが出てきても、そこをグッとこらえて人として正しい道のど真ん中を歩いていきたいもの。
最近注目している方で、北川八郎さんっていう陶芸家がいるんですが、経営の本も出している方。その本に「ちょっと損をする生き方」という言葉が出てきます。
今までの、自分だけが勝つという世界から、自ら進んで損をするような選択をすることで、経営もうまくいくという観点です。
ひょっとしたらバレなきゃ大丈夫って考え方を乗り越えて、ちょっと損した気持ちになるけど、正しい道を歩もうって感覚に似ているのかなと思いました。
北川氏の『無敵の経営』という本、おすすめです。
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