法律が変わる前は、資本金が1000万円ないと株式会社を設立できませんでした。
有限会社も資本金が300万円必要だったんだよね。今は法律も変わって新しく有限会社作れなくなっちゃったけど。
株式会社も今は資本金が1円からでも設立できるようになりました。実は資本金1000万円時代に、ある条件を満たせば1円からでも株式会社は設立可能でした。
それを当時は「最低資本金規制の特例」と言っています。今回はその時の最低資本金規制の特例について振り返ってみたいと思います。
・会社法が変わる前の資本金1円で会社設立する昔の方法について。
・最低資本金規制の特例について。
◆資本金1円で会社設立できるまでの歴史
現在は会社設立に関する法律が変わって資本金1円からでも会社設立できるようになりました。
資本金に関する項目は「1000万円以上じゃないと会社設立できない」→「1円の資本金で会社設立しても5年以内に1000万円以上に増資すれば大丈夫」→「ずっと1円の資本金でもOK!」という変遷をたどっています。
一つずつ詳細を見ていきましょう。
(1)昔は資本金が1000万円ないと会社設立ができませんでした。
昔は株式会社で1,000万円、有限会社で300万円の資本金がないと会社を設立することが出来ませんでした。
資本金は会社の体力を測る尺度です。会社を立ち上げて仕入れをして物を売ったり、設備投資をして物を作ったり、何かサービスを提供する。第三者との取引き必ず発生するので、会社設立後に勝手に倒産なんかしたら関わる会社全てが困ってしまいます。
何か問題が起きた時の保障だって、ある程度会社に体力がないと心配です。そこで新規で会社を作るときには、株式会社であれば資本金1000万円以上じゃないとダメだとしていたのです。
(2)最低資本金規制の特例で1円の資本金でも会社設立できるようなった
それでも新しく会社立ち上げたいと思う人たちにとって資本金1000万円は大きな金額です。新しい会社がどんどん立ち上がって経済が循環して欲しい国は、最低資本金規制の特例というかたちで資本金の要件をゆるくしました。
1円の資本金で会社設立できるようにするけど、5年以内には最低1000万円まで増資してください!という制度です。
この頃は1円の資本金からでも会社設立できるということで喜ばしかったのですが、5年以内に1000万円まで増資しないといけないのが大きなデメリットでした。
他にも、毎年決算書類を所轄の行政機関に提出しなくてはいけなかったのも通常よりも手間でした。
もし5年以内に1000万円まで増資できないと、有限会社や合資会社などへ組織変更をするか解散しないといけませんでした。
(3)1円の資本金で会社設立しても増資する必要がなくなりました!
現在の新会社法へと改正されたことで、資本金1円で会社設立しても増資する必要はなくなりました。
1円の資本金のまま、事業を運営できるのであれば、増資をせずにずっとそのままで大丈夫なのです。
最低資本金規制の特例でのデメリットが完全になくなり、会社を立ち上げやすくなったわけです。今はインターネット系のビジネスだと元手のお金を必要としない事業も存在しますので、1円の資本金によってかなり会社を設立しやすくなりました。
◆現在の会社法に変わってどれぐらい会社設立しやすくなった?
現在の会社法によって、本当に会社を設立しやすくなりました。裏を返せば、昔がどれだけ会社設立をするハードルが高かったのかというわけです。
資本金1000万円の縛りがなくなったのは、本当に大きいですよね。今は普通に1円からでも会社が作れるので、少ない資本金で会社を作るのは当たり前です。
その他にも、会社設立しやすくなった項目がいくつかあります。
(1)取締役が一人でも株式会社設立できるようになった
昔は株式会社なら「取締役3人以上、監査役1人以上」というルールがありました。
今は株式の譲渡制限をして、取締役会を置かない会社であれば、取締役一人でも設立できるようになりました。
逆に取締役会を置くときは、引き続き取締役が3名以上で監査役も1名以上必要です。
現在の株式会社設立については、要件をまとめた記事があるので一緒に読むと理解が深まるはず。
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(2)有限会社が株式会社に一本化され、新しく合同会社が加わった
有限会社は現在では新しく設立はできません。会社法が改正されて株式会社に一本化されたのです。
それまでは、株式会社を設立する要件が資本金1000万円以上だったり、取締役も3名以上だったり、ハードルが高すぎました。比較的ハードルの低い有限会社を選ぶ人もいたのですが、株式会社自体のはハードルが低くなったのであまり意味をなさなくなりました。
その代わり、新しくできた概念は合同会社です。合同会社は株式会社と比べても設立費用が安かったり、比較的会社運営がしやすいメリットがあります。
(3)類似商号の調査の範囲が小さくなった
類似商号とは、同じ名前の会社があるかどうかのチェックです。この範囲が法改正によって小さくなったので、会社設立をしやすくなりました。
現在は同じ住所に同じ会社を設立できません。そのため類似商号の調査は同じ住所の調べで済んだわけです。
(4)払込の保管証明書が必要なくなった
昔は資本金の証明書類として銀行から、払込の保管証明書をもらわないといけませんでした。わざわざ銀行から保管証明書をもらう手続きがあるので、面倒です。
今は資本金の金額分を発起人の通帳に振り込めば大丈夫。通帳の印字された該当箇所をコピーして法務局へ提出するだけです。
◆1円起業をした後は増資した方が良い?
もし、資本金1円のままで事業を問題なく進めていけるのであればそのまま運営していった方が良いと思います。
資本金を増やすには法務局へ改めて資本金を増やす手続きをしなくてはならず、その手続きにお金を払わないといけないからです。無駄にコストをかけないというのが経営の鉄則ですから、必要ないのであれば増資しないに越したことはないですね。
それでは、1円起業をして増資した方が良いケースはどんな点でしょうか?
(1)許認可を受けなくてはいけない事業をスタートする
仕事の中には、行政へ許認可の手続きをしなければすることの出来ない仕事もあったりします。その許認可は、どの許認可を受けるかによって条件が様々なのです。
条件の中に資本金が○万円以上でないといけないとか、資産が○万円以上ないといけないなどの1円の資本金のままではおよそ許認可を受けるのが難しいだろう仕事も存在するのです。
その時は、場合によって増資をしなければいけないこともあるかもしれません。
(2)対外的な信用を高めて事業を進めやすくする
資本金は事業を進めていくための元手であると同時に、会社の信頼性を示す尺度とも捉えることができます。
資本金の大きさによって、取引のしやすさや、新規開拓のやりやすさが業界によっては変わって来ることがあるのです。
また、人材採用に関しても資本金が大きいことによって与えられる安心感も違いますので、増資をすることによって良い影響を与えられる可能性も出てきます。
(3)金銭面で支援してくれる支援者が現れた
稀なケースかもしれませんが、革新的な技術やサービスを持っているということでお金を支援してくれるという人が現れた場合、増資した方がいいケースがあります。
お金の支援をしてくれる人が、会社にお金を出してくれたとしても増資という扱いにしなければ、あくまでその人からお金を借りているという状態になって、将来的にお金を返さなければいけあなくなります。
それを増資するかたちで資本金に組み込んでしまえば、会社の資本金なわけで返す必要はなくなりそのまま事業のために使えるわけですね。
ただ、出資するというのはそのまま株主になるというわけですので、過半数以上の株式が他人に持たれる点だけは気をつけて下さい。
持っている株の割合が、そのまま会社への影響力の強さになるわけですから、出資をしてくれるとホイホイついていって、気が付いたら会社が乗っ取られていたなんてことが無いようにしてくださいね。
◆「資本金1円の株式会社の増資」まとめ
昔と比べて株式会社が設立しやすくなったことは良いことです。逆にカンタンに設立できる分、信用の低い会社が乱立したことも事実です。
ビジネスの現場では、新しく取引する会社の信用調査はできる限りした方が良いというのが私の見解です。
自分が資本金1円で株式会社設立するときも、資金繰りだけは枯渇しないように注意してください。このまま増資をせずに経営する場合は、もしもの時のために使える資金を個人で用意しておくのが安心です。
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