会社設立を企てる人のことを、「発起人」と言います。発起設立というスタイルの場合(会社設立のほとんどが発起設立です)は、発起人がそのまま株主になります。
この会社立ち上げの発起人は、人間だけでなく法人もなることができます。この発起人に法人がなるケースは、そろえる書類や手続きの流れに少し違いがあるので注意しましょう。
そこで今回は、あらためて法人が発起人として出資をして株式会社を設立するときの注意点について整理します!
・会社が発起人として出資をして、株式会社設立するときの注意点
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◆法人が発起人となり株主として株式会社設立するときの概要
株式会社設立するときの登場人物は、「取締役」と「発起人」です。
取締役は、株式会社を経営する立場の人です。その中で会社を代表するのが代表取締役というわけですね。
発起人とは株式会社設立を発起する人のことです。発起とは、企てて行動するという意味なので株式会社設立のために具体的に動く人です。
(1)発起人には法人もなることができる
発起人と聞くと「人」という文字が入っているので人間しかなれないと思いがちです。実は法人も「人」という文字が入っているので発起人になることができるんですね。
私たちがイメージする会社とか、企業とかいうのは組織なのですが、人のような権利を与えているので法人と表現しているわけです。(法律によって人と見なすといった感じで法人というらしいです。)
法人が発起人になれるなら、取締役になれるんじゃないの?と思われがちです。
残念ながら、法人は取締役になることはできません。会社に関するルールを決めた会社法に、法人は取締役になることができないと書いてあるのです。
まぁ、会社の経営という具体的な行為は、人間じゃないとできないからだと思います。法人だと代表がコロコロ変わっちゃう可能性だってあるわけですもんね。
(2)法人が発起人として出資することは株主になるということです
発起人は、会社の設立を企てる人だとお伝えしました。つまり株式会社設立の具体的な実務をすることなんですけど、商号を決めたり、事業目的を決めたり、会社の要件を決めます。
その中で資本金を決めたりするわけなのですが、この資本金を準備するのが発起人というわけです。資本金を出した発起人は、その権利として会社の株主となります。
株主は、株主総会を通して、その会社経営に影響を与えることができる人ですね。つまり発起人は会社設立後には、そのまま株主になることができるわけです。
発起人が法人であれば、その法人はそのまま新しく設立した会社の株主になることを意味しています。
株式会社設立で発起人がそのまま株主になることを「発起設立」と言います。この他に「募集設立」という方法があるのですが、違いについてはこちらの記事をご覧ください。
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◆法人が発起人として出資して株式会社設立するときの注意点
具体的に法人が発起人として株式会社設立するには、普通の手続きと違う点があります。
間違えないように、注意点を一つずつ見ていきたいと思います。
(1)出資する法人が準備する書類について
普通の株式会社設立と比べて、法人が発起人になると準備する書類に注意が必要です。普通は、発起人の印鑑証明書でいいのですが、法人の場合は以下の書類を準備してください。
1、法人の印鑑証明書(3ヶ月以内に発行したもの)
まずは通常と同じように、3ヶ月以内に発行された法人の印鑑証明書を準備します。これは1枚だけで大丈夫です。
2、履歴事項全部証明書(3ヶ月以内に発行したもの)
法人が発起人なるからこそ準備しないといけない書類が履歴事項全部証明書です。これは、登記事項証明書とか謄本とか言ったりしますが、まぎらわしいので「履歴事項全部証明書」ということで覚えておいてください。
3、「実質的支配者となるべき者の申告書」に使う発起人である法人の株主名簿
発起人に法人がなるのであれば、その法人の株主名簿も準備しないといけません。
株式会社の設立の手続きのなかで、公証役場で定款認証というものがあります。定款という書類を公証役場でお墨付きをもらう手続きをしないといけないのですが、その時に「実質的支配者となるべき者の申告書」を出さないといけません。
これは新しく立ち上げる会社を実際に支配する立場(一番影響力を持っている立場)の人の身分を証明する書類です。
もし発起人である法人が、実質的支配者となるべき立場の時には、発起人となる会社を実質的に支配している株主の名前を書類に書かないといけません。その株主を証明する書類として発起人となる会社の株主名簿が必要になるということでした。
管轄の公証役場によって扱いが違うかもしれないので、必ず確認するようにしましょう。
(2)発起人企業と設立企業は共通の事業目的が含まれていないといけない
株式会社の設立書類を準備するにあたり、事業目的を決めないといけません。基本ルールは普通のときと変わりませんが、発起人に法人が入る場合には、共通の事業目的を最低一つは入れないといけません。
たとえば株式会社Aが発起人となり、株式会社Bを設立するとします。この二つは全く違う仕事をすることになっていたとしても、たとえば株式会社Aの事業目的に「ITコンサルティング業」と書いてあれば、株式会社Bにも共通する「ITコンサルティング業」と書いておかないといけません。
お互いに複数ある事業目的の中から、なんでも良いので最低一つは共通の事業目的を設定しておいてください。
(3)法人が発起人として出資する場合は親会社と子会社の関係に注意
法人が出資者として新しく株式会社を設立すると、広い意味で親会社と子会社という関係性になります。株の割合では、関連会社とかグループ会社みたいな位置付けになるかもしれません。
その時に、税務的に気をつけないといけないのが、新会社の過半数となる株主となる法人の二年前の売上が5億円を超えている場合です。
普通なら資本金1000万円未満で会社設立をすると、消費税が課税免除になります。ただし、上の条件(実は他におありますが)を満たすと、消費税が課税免除になる特別ルールを満たせなくなってしまうので注意をしてください。
(4)株式会社設立書類の発起人の書き方に注意
株式会社の設立書類にも少し注意は必要です。
株式会社設立の書類には発起人が押印する箇所があります。通常なら発起人の部分は、出資する会社の名前と法人の印鑑を押せば良いと思いがちなのですが、法務局側からすると法人の印鑑を押すのは、あくまでもその会社を代表する人なので代表者個人の名前まで書類には書いてくださいと言われました。
◆「法人が発起人として株式会社設立する」まとめ
法人が発起人となるときには、準備する書類、作成する書類、税金のこと、押印のときなど注意すべき項目が盛りだくさんです。
わからない点は法務局に確認したり、専門家にお願いするなどしてスムーズに会社設立できるようにしましょう。
・法人が出資者になるときは、法人の印鑑証明書と履歴事項全部証明書を準備する。
・発起人である会社と設立する会社には、最低一つの共通する事業目的を載せる。
・法人が実施的支配者になるときは、その法人の株主名簿を準備する。
・押印する書類には、発起人の会社名だけでなく代表名まで記載する。
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