会社の経営者に支払う報酬、つまり役員報酬には厳しいルールが適用されています。会社の役員であれば利益が出たら自分の役員報酬に上乗せして税金を安くしてしまおうという事がカンタンに出来てしまうからなのですが、役員報酬もルールの範囲内であれば変更は大丈夫です。
今回は役員報酬の変更手続きに関する具体的手順を調べましたので、流れや書類作成の方法まで見ていきたいと思います。
ちなみに、税金対策のために役員報酬をどのように決めたら効果的かどうかについては、こちらの記事を参考にして下さい。
◆役員報酬に関する基本事項の整理
1、役員報酬は一年間変える事ができない(定期同額給与)
まず役員報酬は基本的に一年間は変更する事はできません。これは会社に利益が出たら、役員が自分の役員報酬に自由に上乗せ出来てしまうと利益調整となって会社の税金を考える上で不平等になってしまうからです。
2、役員報酬の変更を出来る状況は3パターン
ただし、何も絶対に役員報酬を変更出来ないわけではありません。一般的には3つの状況下であれば役員報酬は変更できると言われています。
・新しい事業年度がスタートして3ヶ月以内なら役員報酬変更OK
会社の事業の区切りである事業年度が新しくスタートしてから3ヶ月以内であれば役員報酬は変更可能です。1月から新しい事業年度がスタートしたのであれば3ヶ月目である3月までは上げるも下げるも自由です。ただし、4ヶ月目の4月以降はもう役員報酬を変更できないので注意して下さいね。事業年度の考え方がわからない方はこちらの記事を参考にして下さい。
・会社の業績が悪い時は役員報酬変更OK
会社の業績が悪い時も役員報酬の変更は可能です。ただし、ほんの少し前年比下回りました、というレベルではなく、倒産の危機になるぐらい下がってしまい役員報酬下げない事にはどうにもこうにもならないぐらいのレベルのお話です。取引先に迷惑がかかるので役員報酬下げますとか、いくつかある業績再建プランの内の一つが役員報酬下げる事です、というように納得感のあるレベルでの理由が必要です。
・役員として昇格、降格したら役員報酬変更OK
例えば取締役から代表取締役に期中(期の途中)で昇格した場合なんかは役員報酬上がりますよね。そんな場合の役員報酬変更は期首(期がスタートした時)から3ヶ月以内でなくとも、役員報酬の変更は大丈夫と言われています。
◆役員報酬を変更する手続きの具体的な手順・流れ
1、役員報酬を変更できるのは事業年度スタートして3ヶ月以内
すでにお伝えしましたが、毎月同じ金額の報酬を支払わないといけないというルールが役員報酬にはあります。これを定期同額給与と言います。これを変更するには、新しい事業年度がスタートして3ヶ月以内に、これから説明する手続きを踏まないといけません。これをしないと、上がった分の役員報酬は損金(経費のようなもの)に出来ないので気をつけましょう。
2、株主総会で役員報酬の変更をする事を決定する
役員報酬の金額を変更する時には事業年度スタートしてから3ヶ月以内に株主総会を開きます。その細かい手続きの流れを見ていきましょう!
(1)株主総会を開催
新しい事業年度がスタートすると、実は必ず株主総会は開かないといけないんですね。それを定時株主総会と言います。その定時株主総会の時に、役員報酬に関する事を話し合って変更するという手続きを取れば良いんですね。
(2)議事録を作成
役員報酬を変更する時には、いくらに変更しましたよ!というのを議事録で形に残しておきます。株式会社の場合や、合同会社の場合など様々あるので、議事録の雛形は後半で紹介しますね。
(3)最長でも3ヶ月目の末に改定して変更は翌月からでもOK
役員報酬は新年度が始まって3ヶ月以内に変更と言っていますが、例えば3月決算の会社であれば4月から新しい事業年度のスタートです。役員報酬の変更手続きは3ヶ月以内なので6月末までという考え方ですよね。株主総会から議事録作成までは6月末までに終わらせれば良いわけです。実際の変更した報酬支給月は4ヶ月目の7月からでも大丈夫とは言われています。
役員報酬の変更手続きについて、取締役会も関わる事があります。小さな規模の株式会社であれば取締役会を置いていない会社がほとんどですが、大きな株式会社で取締役3名以上で監査役を置ける会社は取締役会を設置する事もできます。その場合、株主総会では支給できる役員報酬の限度額を決めて、取締役会で支給額を決めたりもします。
(4)役員報酬を変更したら社会保険の変更も大事!
会社の経営者もみんな入っている社会保険ですが、役員報酬が変わると社会保険料も変わるのでちゃんと手続きしておきましょう。毎年4月から6月のお給料の額によって一年間の社会保険料が決定します。それ以外の時期に、大きく給与や役員報酬が変更になる時には、「被保険者報酬月額変更届」を年金事務所に提出して、社会保険料の変更をしないといけません。
無料で役員報酬の給与計算など幅広い労務をカバーできるクラウド型の給与計算システムですが、実は有料プランだと社会保険料の変更の手続きにも対応している優れものです。
◆役員報酬を変更する時の議事録の雛形
役員報酬の変更には株主総会を開くのはすでに説明した通りですが、それを記録として議事録を残さないといけません。その時に会社の状態に合わせていくつか議事録のパターンがあるので、紹介しますね。
(1)株式会社の役員報酬変更の議事録
株式会社であれば役員報酬変更の議事録を作成すれば大丈夫です。雛形に沿って作成しましょう。それぞれの役員に対して変更後の役員報酬の金額を記載し、会社の印鑑と、出席している株主の実印を押して完成です。
(2)合同会社の役員報酬変更の同意書
合同会社の場合は、株主総会が存在しないので社員による同意書を作ります。会社経営に携わる社員が役員報酬の変更に同意しましたよ!という書類です。
(3)各種議事録をまとめたオススメの本
最後に中小企業であれば色んな議事録作成が必要になってきます。ネット上でも無料の議事録雛形がありますが、本で議事録の書き方を知りたい方はこちらの本がオススメです。ワードデータの雛形も付いてくるので一石二鳥です。専門家に頼んだら毎回安くても数千円は手数料で取られると考えると、長い目でみれば安いもんです。
◆「役員報酬を変更する手続き」まとめ
いかがでしたでしょうか。役員報酬を変更する具体的な手続きを知っていないと、せっかく変更できたと思ったのに出来ないなんて事がないように気をつけて下さいね。役員報酬は税金対策する上でも非常に重要な要素ですから、慎重に手続きは進めていきましょう。
1、他にも税金対策という観点で役員報酬を決定する時
すでにお話しましたが、役員報酬の決め方一つで会社の税金が大きく変わります。こちらの記事で役員報酬と税金対策の関係を理解して、効果的な役員報酬額を決定できるようになりましょう。
2、合同会社の代表社員が役員報酬を決定する時の注意点
株式会社の代表取締役と同じぐらい、合同会社の代表社員も役員報酬の支給については注意しあいといけない事がたくさんあります。こちらの記事で紹介しています。
3、年収1000万円以上の報酬をもらっている人の税金対策について
年収にして1000万円以上の給与や報酬をもらっている人は、増税の波にさらされています。少しでも手元に現金が残るように年収1000万円以上の人向けの税金対策情報をこちらの記事でまとめてみました。
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