現物出資で会社設立をする方法!注意点やメリット・デメリットとは?調査報告書や財産引継書の作り方

会社設立するときに必ず決める資本金。普通はお金が資本金ですよね。

え?変なことを言っている?お金が資本金なんて当たり前じゃないかって?

実はお金以外のモノを資本金にすることができるのです。これを現物出資と言います。

この記事でわかること

現物出資で会社設立したら資本金が増えるのかな?だったら身の回りものを現物出資してみようかな?

・・・ちょっと待ってください!

現物出資をして会社設立することはメリットもありますが、デメリットの部分も見極めてください。

設立した後に「こんなはずじゃなかった!」をなくすために、現物出資の基本的なことから、注意点まで整理します。

おおもりくん

パソコンや車とか、会社で使う予定があるから資本金の足しになったら嬉しいよね。

しゃもじい

ものだけじゃなくて、株などお金の価値があるものは資本金に充てることができるんじゃ。

◆現物出資を資本金として会社設立するときの基本事項

資本金というのは、会社の元手となるお金。

株式会社でも、合同会社でも設立したばかりの時はこの資本金で会社を運営することがほとんどです。

その他にも、会社の信頼の尺度として機能したり様々です。

おおもりくん

会社の運転資金なったり、多ければ多いほど信頼が大きくなるなら、現物出資を活用してなるべく資本金は大きくした方が良いに決まってるじゃん!

しゃもじい

食べ過ぎは体に良くないのと同じように、実は資本金の増やしすぎは創業当初は不都合なこともあるんじゃよ。

一つ一つ順を追って見ていこう。

(1)どんなモノが資本金として現物出資できるんですか?

現物出資と言うぐらいですから、パソコンや自動車など形あるものを資本金に充てることができます。

それ以外にも不動産や土地、有価証券(株式など)を資本金とすることができます。

考え方としては、貸借対照表という帳簿に載せられるもので譲渡可能なものです。

だから機材や設備などから、商品の原材料、有価証券だったり土地や不動産、特許権などお金の価値に置き換えられるものはほとんど現物出資の対象の可能性があると考えて良いでしょう。

だけど「譲渡可能なもの」という条件があるので、たとえばローンが残っている自動車なんかは現物出資できません。

現物出資した後は、会社のモノにしないといけないから名義変更します。

ローンが残っている自動車は名義変更できないので、「譲渡可能」でなくなってしまうわけです。

おおもりくん

そっかぁ、現物出資の条件にある「譲渡可能なもの」ってそんな意味があるんだね。

しゃもじい

クルマや不動産や土地でも名義変更が必要なものは、要注意じゃな。

(2)現物出資の金額が500万円を超えるかどうかで手続きが変わる

現物出資する金額は、500万円を超えるかどうかで手続きの面倒臭さが変わります。

たとえば自動車を現物出資する場合を考えてみましょう。

同じ車種でも、新車を現物出資するときと、中古車を現物出資するときでは、世の中で流通している価格はバラバラです。

中古車なのに、新車と同じ金額を設定していたらおかしいですよね。

本来であれば中古車市場で100万円の価値しかないのに、300万円の価値があるようにして資本金に入れてしまったら問題なわけです。

現物出資の金額が大きければ大きいほど、そのリスクも高まります。

そこで500万円以上の金額を現物出資する場合は、第三者から客観的な評価をもらわないといけません。

その客観的な評価をしてくれるのが検査役です。

1、500万円以上の現物出資には検査役に金額の評価をしてもらう

現物出資が500万円を超えるときに、検査役と呼ばれる人に資本金に設定する金額が適切か評価してもらわないといけません。

検査役は誰でも良いわけではなくて、裁判所が選んだ人になります。

裁判所に選ばれた、弁護士や公認会計士によって、出資する現物がいくらになるのか調査してもらい、その金額を証明してもらうわけです。

おおもりくん

500万円を超える現物出資をするときは、会社設立の手続きが少し面倒になるんだね。

しゃもじい

500万円以下で現物出資する場合も、適正な金額を設定しなきゃいけんぞ。

2、500万円以下の現物出資でも時価の金額で正しく評価で設定しよう

現物出資の金額が少なくて検査役がつかないからって、デタラメな金額を現物出資額としてはいけません。

ちゃんと対象になるモノの市場で出回っている金額を調べて設定します。

中古車を現物出資するのであれば、中古車売買サイトなどで車種や年式から同程度の金額を設定しないといけません。

おおもりくん

検査役がつかないなら、資本金を大きく見せるためにちょっとぐらい幅を持たせちゃって良いんじゃない?

しゃもじい

もしウソが発覚したら発起人が責任を持って足りない金額を補填しなきゃならないリスクがあるんじゃよ。

そもそも経営者として、誰も見てないからルールから逸脱しようと考える気持ちの方が問題じゃぞ。

◆現物出資で会社設立する時のメリットやデメリット&注意点

モノをお金に換算して、資本金に充てることができるのは見方によっては非常に便利な仕組みです。

しかし資本金が大きく「見える」ことだけに着目して、そのためだけに現物出資するならデメリットにも目を向けないといけません。

しゃもじい

どんなに便利なルールでも、本来の目的と違う使い方をすると落とし穴があるっちゅーことじゃ。

おおもりくん

酸いも甘いも理解した上で、使いこなしたいね。

(1)現物出資で会社設立をするメリット

すでに説明した内容も含まれますが、現物出資のメリットを整理しました。

1、現物出資することで資本金の額を増やすことができる

当たり前ですが、現金だけで出資するよりも、会社で使う予定のモノをすでに持っていたらそれも一緒に資本金に入れた方が良いですよね。

資本金が大きいと、対外的な信頼は大きくなる可能性があるので、額が大きいに越したことはないわけです。

2、現物出資したものを経費として計上できるかもしれない

現物出資するモノを経費として考えることが出来るかもしれないということです。

車やパソコンなど、会社で使用する予定のモノを持っていたときに現物出資したとしますよね。会社で譲り受けた金額分は、経費計上できるのです。

とはいっても、車など金額が大きなモノについては、減価償却といって、法律で決まった年数に分けて経費計上していきます。

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3、現金がない人でも出資できるモノがあれば発起人になれる

あえてメリットに挙げるなら、現金を出資できない人でも発起人・株主として出資できるのが現物出資の良さでしょう。

(2)現物出資して会社設立するデメリット

現物出資することでマイナス面もありますから、ちゃんとデメリットも見ておきましょう。

1、現物出資をすることで税金を追加で求められるかもしれない

現物出資をして会社設立のデメリットとしてまず考えられることは、税金を追加で納めないといけなくなるかもしれないということです。

出資をする人が会社に現物出資するモノを買い取ってもらうという扱いですから譲渡益が発生して、その金額が大きいと税金が課されてしまうかもしれないわけですね。

たとえば現物出資するのが不動産で、時価で会社に出資するので不動産の価値が上がっている状態であれば、その分譲渡益が出てそこに課税されるかもしれないというわけです。

2、正しい現物出資金額を設定しないと発起人や取締役に責任を取る

現物出資はあくまで時価を手続きする側が調べてそれで書類を作って会社設立の手続きをします。

本来は、その価値がないのに、あたかも高い金額で現物出資をして実態とかけはなれていることがわかった場合は、発起人や取締役で責任をとって下さいね、ということになります。

つまり、足りない分は発起人や取締役で資本金として現金を入れておいて下さいね、なんてことになってしまいます。

3、会社設立の手続きの手間が増える

現物出資は手続きの手間がかかります。通常の会社設立の手続きよりも追加で作る書類などもあり少し面倒になります。

現物出資するモノの時価も調べなくてはいけなくなりますし、メリットをあまり享受できないわりに時間がかかって大変だったなんてことにならないように気をつけて下さい。

(3)現物出資で会社設立するときの注意点

無計画で現物出資すると痛い目を見るかもしれません。

地に足をつけて、計画的に現物出資していきましょう。

1、現物出資をして合計1000万円を超える資本金になると要注意

会社設立時の資本金は、1000万円以上になると一期目から消費税を収める立場になるというルールがあります。

そのため、ほとんどの会社が1000万円未満の資本金で会社設立をするのです。現金と現物出資で会社設立をするときには、合計で資本金が1000万円を超えないように注意しましょう。

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2、名義変更が必要なモノは現物出資前に手間とコストを確認

現物出資は、会社に譲ることができるものしか対象にできません。

車や不動産など名義変更が必要なものを現物出資するなら、事前に手間とコストを確認しておいてください。

あぁ、現物出資しないで普通に対応した方が安くすんだ・・・なんてことがあるかもしれません。

現物出資した方が良いのか、会社設立後に簿価で会社に譲った方が良いのかなんて素人ではなかなかわかりませんから、大きな金額のときは税理士に相談した方が良いです。

◆現物出資のための財産引継書や調査報告書など書類の作り方

現物出資をすると、会社設立書類に一手間を加えないといけません。

その面倒臭さがデメリットの一つでもあるのですが、現物出資するときの具体的な書類の作り方を見ていきます。

(1)現物出資した時の「定款」の書き方

定款は会社の基本ルールを決めた書類。もちろん資本金についての記載もあります。

現物出資をした時は、その内容を定款に書いておかないといけません。

法務局で共有されている定款のフォーマットを見ながら整理しましょう

(発起人)

第33条 発起人の氏名,住所及び発起人が設立に際して引き受けた株式数は、次のとおりである。

○県○市○町○町目○番○号 ○○○○(発起人の氏名)
○○株 ○万円

例えば第33条にこのような発起人に関する条項があったとします。

そしたら現物出資をしたことを記載するために第34条として次の項目を付け加えてください。

(現物出資)

第34条 当会社の設立に際して現物出資をする者の氏名,出資の目的である財産及びその価格並びにその者に対して割り当てる株式の数は次の通りである。

(1)現物出資者
発起人 ごはん粒太郎

(2)当該出資財産及びその価額
ア、軽貨物自動車(ニッサン クリッパー)1台
型番 GBDーU71V
製造年 2013年 製造番号 U71Vー●●●●
金 40万円

(3)以上に対して割り当てる株式の数
株式 40株

現物出資するモノと内容を詳細に書いてください。

自動車であれば品目と型番に、そのモノを特定する製造年と製造番号を書いておきます。

自動車以外の場合は、どの情報を定款に残すのかは法務局や公証役場へ確認しておいた方が良いと思います。

払込証明書には現金のみの出資金額を書く

資本金の証明としては、払込証明書というものがあります。(詳しい作り方などはこの記事

この払込証明書は現金の資本金を証明するものです。

現物出資をしている分の金額は含めず、現金のみの金額で作成しましょう。

(2)現物出資したときの「資本金の額の計上に関する証明書」の書き方

通常の会社設立時に作る払込証明書は、現金の出資のみ載せる書類でした。

現物出資の金額と、現金の出資の両方を記載るのは「資本金の額の計上に関する証明書」という書類になります。

雛形と書き方例は以下の通り。

資本金の額の計上に関する証明書

当会社の資本金の額は、下記のとおり会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証明します。

1.払込を受けた金銭の額

2.給付を受けた金銭以外の財産の価額

3.資本金又は資本準備金の額として計上すべき額から減ずるべき額

4.資本準備金の額

5.資本金の額

令和●年●月●日

●●(住所)

●●(会社名

設立時代表取締役●●

(3)現物出資した時の「財産引継書」の書き方

財産引継書の書き方は次の通り。

財産引継書

私所有の下記財産を現物出資として給付します。

令和●年●月●日

●●(発起人住所)

●●(発起人氏名)

株式会社●● 御中

1、品名 軽貨物自動車(ニッサン クリッパー)1台
型番 GBDーU71V
製造年 2013年 製造番号 U71Vー●●●●
金 40万円

以上この価額の合計 40万円

以上

財産引継書なので、現物出資するモノを譲渡する日付を記載します。

そしてモノを提供する発起人の氏名と住所を記載し、設立する会社に御中を付けておきます。

(4)現物出資した時の「調査報告書」の書き方

調査報告書の雛形はこちらのページの法務局の会社設立書類のまとまっているページに存在します。

 調査報告書

調査報告書

私たちは、株式会社●●の設立時取締役に選任されましたので、会社法第46条の規定に基づいて調査委を行いました。

その結果は下記の通りであり、法令もしくは当会社の規定に違反し、又は不当な事項は認められません。

1 発起人●●(氏名)の現物出資財産は、会社法第33条第10項第1号の場合に該当し、定款に記載された価額の総額金40万円は相当であると認められる。

2 出資の履行については、別紙財産引継書により、完了していると認められる。

3 会社成立後に譲り受けることを約した財産、会社成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益、会社の負担する設立に関する費用の定めはない。

令和●年●月●日

株式会社●●

設立時取締役●●

設立時取締役●●

(5)現物出資した時の「発起人決定書」の書き方

株式会社設立の場合は、発起人決定書というもので「誰がいくら出資して株をどれぐらい持つのか」を決めたり、「本店所在地はどこか」を決定する書類をつくります。

発起人決定書の出資者の情報のところにも、現物出資のことを盛り込まないといけません。

発起人決定書

令和●年●月●日、●●(住所)当会社創立事務所において、発起人(●●及び●●)

◆「現物出資をして会社設立」まとめ

私が知っている現物出資では、石鹸を現物出資している人がいました。これは美容石鹸を設立前に作った人だったので、特別なケースかもしれないのですが、石鹸も現物出資できるんだと驚きでした。

こう聞くと何でもかんでも現物出資して、資本金を大きく見せたり、メリットを享受した方がおトクじゃん!と思うかもしれませんが、ちゃんとルールに沿って、戦略的に現物出資を考えないといけません。

参考図書
佐藤孝幸『会社法がよくわかる講座』かんき出版,2013年,p.58