健全な経営のため最低でも株式会社設立時の資本金はいくら必要?

株式会社とは、お金を出資する人と経営をする人を分けて管理できる会社の形態です。

大きな規模になれば株主と呼ばれる出資者から経営者がお金を集めて、そのお金を使って世の中にモノやサービスを提供して利益を得る。その利益で資本金を出資してくれた株主へ還元していくのが株式会社の大きな役割です。

そしてこの資本金に関していうと株式会社設立時に大切なポイントをいくつも含んでいます。昔は最低でも資本金1,000万円以上ないと設立できませんでした。今では資本金の最低額のハードルが下がりまして、1円からでも株式会社設立出来るようになりました。

だけど、資本金がたった1円だけで本当に会社が成り立つのでしょうか・・・

そこで、今回は健全な経営をするためには株式会社設立時の資本金は最低いくら必要なのかポイントを調べてみました。

◆資本金について基本事項を整理

資本金が最低でもいくらぐらいにするのが会社運営をする上で丁度良いのか調べる前に、資本金の特徴について整理しておきましょう。

1、資本金とは

・株式会社設立時の資本金は発起人が出資する

資本金は会社の元手となるお金です。株式会社設立時は発起人が資本金を出資します。発起人とは株式会社設立を企てる人たちのことですね。設立後には株主となります。

・出資をするというのは株式を買うこと

株式会社は資本金を集めるために株式を出資者(株主)に買ってもらいます。株式会社設立時の出資者は発起人ですから、発起人はお金を出資する代わりにそれと同等の株式を手に入れるのです。

・株式の数が株主総会の議決権=資本金をたくさん出した人が一番エラい

株式会社の経営で大切なことは取締役会や株主総会で決めます。取締役会を置かない株式会社はすべて株主総会で決めるので、それこそ株主総会の役割が大きくなります。

株主総会は多数決で決められ、その議決数は出資した金額に紐づくのです。ですから、株式会社設立時はシンプルにお金を一番出資した人が、会社に対して一番影響力を与えることが出来るということです。

2、資本金は会社のために使って良いお金です

よく資本金は使ってはダメで、ずっと会社に残しておかなくてはいけない、と勘違いしている人が多いのですが、資本金は会社のために使って良いお金です。逆に社長のプライベートな事に使うことは出来ません。

たいてい設立したばかりの会社は売上が上がるまで時間差があります。ひどいところだと半年先とかあったりします。売上が上がるまでの間は、この資本金から仕入れや給料などの経費をまかなう事がほとんどです。

3、資本金は会社の体力の指標になる

資本金は会社のために使って良いお金という意味でもわかるように、使えるお金が多ければ多いほど何か問題やリスクがあった時のために使うことが出来るだろうし、会社として新しいことに挑戦して成長を加速させるベースになるかもしれません。つまり資本金があれば対外的に安心感があるということです。

4、資本金の金額で税金の取り扱いも変われば出来る仕事も変わる

・税金のルールが変わるのは資本金1,000万円が一つの基準

資本金はある意味で会社の体力だとすると、国としても税金の扱いが変わってきます。体力が少ない会社はとにかく永続してもらわないといけないので、詳しくは後半で紹介しますが税金が優遇されたりします。

・許認可を受けれる仕事に資本金の最低金額が関係してくる

許認可についても後半で詳しく説明しますが、仕事の中には働く人や利用者の命や人権に係わることも少なくありません。国からしたら、ちゃんと責任をとれる会社にそのような大切な仕事をして欲しいということで許認可を与える上で資本金を要件にしていることがあるわけです。

◆株式会社設立時の資本金として最低ラインの考え方

それでは「会社の健全な運営」という観点から資本金は最低でもどれぐらい必要か考える材料を整理していくことにしましょう。

1、会社が軌道に乗るまでの資金として資本金の最低金額を設定

まず一つ目が会社が軌道に乗るまでの資金として資本金を考える方法です。

株式会社設立後に売上が立つまで時間がかかることがほとんどです。それまでの間は資本金を運転資金に充てることがほとんどなので、資本金の最低金額を「売上な無い期間の運転資金」を計算した上で設定する方法があります。

・毎月事業にかかる経費は最低でもどれぐらいか概算する
・毎月の売上の見込みを数値化する
・入ってくるお金が、出ていくお金を上回る月を把握する

もの凄く簡単ではありますが、このような流れで運転資金として資本金の最低額を計算することが出来ます。具体的にもう少し詳しく以下で説明させていただきます。

・毎月事業にかかる経費は最低でもどれぐらいか概算する

どんなビジネスをするかによって経費の金額は変わりますが、わかる範囲で毎月どれぐらいの経費が必要なのかを計算しておきましょう。もちろん自分の給与(生活費)がどれぐらい必要なのかも含めるのを忘れずにして下さい。

参考になるのが中小企業ビジネス支援サイトです。

このサイトからスタート予定の業界や業種のキーワードを検索することが出来ます。事業をスタートするのに何が必要で、資金としてどれぐらい必要なのかが簡単にではありますが紹介されているので計画を立てる時の参考になると思います。

さらに、最高の情報が手に入るのは既に同じ分野で事業をしている人から直接情報を聞くことです。経営の準備をしている人であれば最低でも1人からは情報を聞くようにして欲しいです。

・毎月の売上の見込みを数値化する

次に売上の見込み数字を考えます。難しく考えすぎずに目標数字として何月までにいくらの売上を立てるとういう見込数字で良いかと思います。出来れば厳しめの数字を設定することで、安定した資金繰りの出来る可能性が広がります。

出来れば向こう三年間ぐらいの売上の見込みはシミュレーションしてみても良いと思います。難しいという方でも一年ぐらいの見込みを、目標を作るという意気込みで作成してみて下さい。

・入ってくるお金が、出ていくお金を上回る月を把握する

見込の経費と見込みの売上がわかれば、その二つを照らし合わせてみます。入ってくるお金が、出ていくお金を上回る月があるはずです。その月までは赤字状態で事業を運営しているわけですので、会社設立してから利益が出せる月までの赤字分の合計を出してみます。その合計金額が資本金でまかなえる事が理想的なのでその金額を資本金の最低金額として設定しても良いかと思います。

とはいえ、厳密には金額によってそこまで資本金を用意することが出来ない場合もあるはずですから、その時は用意できる金額を資本金として充てて、足りない部分は融資や他からの借金で対応することも良くあることです。

2、創業時の融資も視野に入れて資本金の最低金額を設定

株式会社設立後に融資を受けるには、日本政策金融公庫と制度融資の二つが候補になると思います。

(1)日本政策金融公庫

国が株主になっている金融機関です。民間の金融機関だとリスクが高くて融資してくれない創業者に向けた融資サービスも幅広く取り揃えています。創業者が融資を考えたときに、一番最初に検討するのが日本政策金融公庫ですね。

(2)制度融資

市区町村が民間の金融機関と一緒に融資のサポートをしているのが制度融資といわれています。基本的には民間の金融機関から融資を受けますが、保証協会といわれる返済出来ない時に保険のようなものを付ける必要があります。自治体(市区町村)が保証料や金利の一部を負担してくれるのが特徴的な融資です。

融資を受けるための詳細については、創業時の融資を確実に受けるためのノウハウをまとめた「株式会社設立後に融資の可能性を飛躍的に上げる方法」の記事をご覧下さい。ポイントを一部紹介させていただきます。

ポイント1:公庫の融資は自己資金がポイント

公庫の創業融資は借り入れ金額の半分から3分の1ぐらいは自己資金で持っておいた方が良いと言われています。会社でいえば自己資金に該当するのは資本金です。ですので、株式会社設立後に融資を受ける予定があるのであれば、それぐらいの金額が資本金としてあると良いです。

ポイント2:自己資金の一部を資本金にし残りは自分で持っていてもOK

ちなみに必ず資本金に自己資金が無いといけないわけではなく、資本金に自己資金の一部を入れて、残りは自分が個人的に持っている状態でも問題ありません。

3、出資比率も考慮に入れて資本金の最低金額を設定

冒頭でお伝えした通り、株式会社設立時は資本金を出資した人が株式を受け取って株主となります。この出資比率でが株の比率となるわけで、半分以上の株式を持っていれば実質的な会社の支配者ということになります。利害関係のある人と一緒に株式会社設立をする時には出資比率をよく考えて資本金を出資するように気をつけて下さい。

◆税金面から株式会社設立時の資本金の最低金額を検討

資本金の金額によって会社の税金の取り扱いが変わってきます。最低でもいくらに設定することが税金を最小限に止めることが出来るのでしょうか。

1、資本金1,000万円より低くして消費税免除

資本金を1,000万円未満で株式会社設立をすると消費税の課税免除を受けることが出来ます。設立してからの二年間は特別に消費税は納めなくて良いというルールが適用されるわけです。

会社はモノやサービスを提供してお客様から消費税を含めた売上をいただきます。この消費税は預かっているだけですので、まとめて計算しなおして消費税分は国に納めないといけないわけです。

ただ、資本金1,000万円未満で株式会社設立をすれば最初の二年間だけ消費税はお客様からもらっても、その後、国に納めないで良いという特別ルールを適用できるのです。このルールにはさらに設立してから半年の売上と人件費が1,000万円を超えると二年目から消費税を納めなくてはいけなくなるといルールもあるのですが、ここで説明するには少し複雑なので、詳しくはこちらの「株式会社設立時の資本金によって消費税はどう変わるのでしょうか?」という記事を参考にしてください。

2、資本金1,000万円より低くして安い法人住民税を適用

会社は法人住民税という税金を支払っています。利益が出ていなくても最低毎年7万円を支払わなければいけないものです。これが1,000万円の資本金を超えてくるとこれが18万円に跳ね上がります。

3、資本金は1億円を越えないように要注意

資本金が一億円を超えてくると法人税の税率が変わったり、他にも一億円以下だから受けることの出来ていた税金的なメリットが受けられなくなります。資本金一億円を超える企業はそうそういないと思いますが一億円をボーダーラインに税金のルールがガラリと変わることだけは知っておいて下さい。

◆株式会社設立時の資本金の設定で最低限気をつけること

最後に、これまで紹介してきた資本金の最低金額を決める上でのポイントですが、それ以外に気をつけておくと良いことをまとめておきます。

1、株式会社設立後に資本金の変更をするとお金がかかります

株式会社設立後に資本金の変更をするのに変更登記代がかかります。基本的に資本金を増やしますので、増資と呼ばれています。この増資にかかる法務局へ手続きするための費用が約3万円です。増資する金額によって変わりますが、3万円と考えておいて良いでしょう。

2、許認可の要件になる場合があります

仕事によっては行政から許認可をもらわないと出来ない仕事があります。その中に資本金の金額を条件に入れているものがあったりするので注意が必要です。例えば派遣会社を設立して派遣業をしようと思ったら資本金は2,000万円以上必要になってきます。そのように自分がこれからやる仕事が許認可が必要かどうか、必要であれば資本金に条件があるかどうかを調べておくようにしましょう。

◆最低限の資本金で株式会社設立することに関するQ&A

1、資本金を1円で株式会社設立をした場合、資金繰りはどうしているの?

会社によって状況は様々なので一概には言えませんが、資本金を最低額の1円で設定したとしても、売上がスグに立つようなビジネスモデルであればその資金を運転資金に回せるので問題はありません。資本金1円で資金が足りなくなるようであれば、金融機関から融資を受けたり、自分の持っているお金を会社に貸したりして事業を運営していくことになるでしょう。

◆健全な経営のために最低でも株式会社設立時の資本金はいくら必要?のまとめ

いかがでしたでしょうか。健全な経営を創業時から推し進めるためにも株式会社設立時の資本金額の最低基準は慎重に決めていきたいものです。

特に大きな規模でなければ、税金的にメリットを享受できる1,000万円未満で、三ヶ月から半年ぐらいの経費をまかなえるぐらいの資本金が丁度良いのではないでしょうか。とはいえ、自身の資金準備具合などによって金額は様々です。まずは簡単にで構わないので事業計画から作ることを始めたらいかがでしょうか。

資本金の金額はもちろんですが、株式会社設立時には他にも決めておかないといけない要件がたくさんあります。そこで、株式会社設立時のメリット・デメリットを先に整理しておくことで要件も決めやすくなると思います。そのためにもこちらの「完全版!株式会社設立のメリットとデメリットをわかりやすく整理」の記事をご覧ください。